悪意を持っただらしない男

カテゴリー「不思議体験」

以前、友人の山田と一緒にパチンコ屋に行ったときの話です。

その日はどういう訳か、せっかく台を確保したのに山田は僕のほうに来るなり「外のドトールで待ってるから」って言うんです。
正直、いつもだったらすぐに『どうしたの?』と聞くんですけれども、そのときの山田の様子は、何故かその場では理由を聞いてはいけない感じで、何かゾワゾワとしたおかしな空気があったんです。

しかたがなく、僕は買ってしまったパッキー分だけ消化し、すぐに山田が待っているドトールに飛び込みました。

山田はすごく言いづらそうに、実は自分には霊感があること、そして、店内で視えてしまったものについて語ってくれました。

ここで注意したいのは、山田の人柄についてです。
山田は普段から冗談を言ったり、人をかついだりすることはありませんでした。
どちらかというと天然ボケにちかいタイプです。

実直だという意味では周りから信頼される人間であり、また僕を含め山田も理系の人間なので、超常的なものについては話題にしたこともなければ、どちらかといえば否定的な立場にいると思っていたのです。
それで山田が視たものなのですが、まず、空いている席に座っている婦人らしき残像の上に、現実の若い女性が座り、残像と重なっていったこと。

また、悪意を持っただらしない男が台の下にしゃがみ込み、打っている人を突き上げるような目で下から覗き込んでいたこと、など・・・。

それよりも「店内を覆うような『負のエネルギー』ともいうべきものが気持ち悪かった」、と言いました。

僕には霊が見えないので山田の真意はわかりません。
また、本当にそんなものがあるのか懐疑的でもあります。

しかし、僕には山田が決して嘘をついていないだろう、とは信じられるのです。
何と言えばよいのか、僕もあそこに居ると運気吸い取られて悪いモノが憑きそうな気がして、それ以来パチンコをしてないからです。

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