白坊主

ゲームプログラマーをやって、もうすぐ15年になる。

確か入社して3年目くらいの頃。
ゼルダみたいな、よくある3Dアクションゲームを作ってた。
ボスキャラは、世界中の神話とか伝説に出てくる神とか悪魔とかを参考にしてたんだけど、ある日、デザイナーからもらったキャラデータの中に、一つだけちょっと異質なキャラがいた。

通称『白坊主』。

見た目は人間・・・というか坊主なんだけど、肌が純白で、口がない。
テクスチャーを使っているのは目だけ。
やけにパッチリと目立つ。

モデリングしたデザイナーに、「コレ、元は何?」って聞いたら、「知らないけど、資料ファイルに載ってて、簡単そうだったからとりあえず作った」って言われた。

資料ファイルっていうのは、キャラデザイナー共有の資料のことで、図書館でコピーした絵とか、ネットで見つけてプリントアウトした画像とかが、全部まとめてあるファイルだった。

気になったので、ファイルを見せてもらうと、確かにその白坊主の資料はあった。
A4のモノクロコピーで、中央に大きく白坊主の絵が描いてあり、周りには良く分からないアラビア系の文字。
どうやら洋書をコピーしたものらしかった。

ファイリングしてあるほとんどの資料は、その余白部分に、出典とか、ファイルした人の名前とか、簡単な説明が書き込まれてたりするんだけど、白坊主のページは、何の注釈もなかった。

こいつがどこの国の何なのかも謎。
そもそもこの資料を誰が見つけてきたのかも分からない。
まあ、絶対に注釈をつけろってわけでもなかったから、そのときはあまり気にしなかった。

それからしばらく開発を進めてたんだけど、どうしても取れないバグがあった。
白坊主との戦闘に限って、相手にダメージを与えていくと、何回かに一度、突然止まる。

リリースも近づいてきたからそろそろ真剣にデバッグしようってことになって、プログラマー総がかりで調べたんだけど、どうしても原因がわからなかった。
メモリが思いっきり破壊されるんだけど、犯人がわからない。

三日くらい調べたけどわからず、結局、キャラ固有の問題だからってことで、白坊主は使用しないことになった。

翌日。
白坊主をモデリングしたデザイナーが、一生懸命にゲームをプレイしていた。

「白坊主のお蔵入りが決定したから、最後の思い出に」ということらしい。

しばらく見ていると、案の定、止まった。
デバッガには、停止アドレス付近のダンプリストが表示されていた。
プログラムエリアが、ゴミデータで埋め尽くされているのが良くわかる。
デザイナーがつぶやいた。

デザイナー:「あのさ・・・前から気になってたんだけど・・・」

俺:「ん?」

デザイナー:「こいつとのバトルで止まると、いつも、このウィンドウ出るよね」

デザイナーはデバッガを指さして言った。

俺:「出るけど、何?」

——–: +0 +1 +2 +3 +4 +5 +6 +7 +8 …
00d02090: de ad de ad de ad de ad de …
00d020a0: de ad de ad de ad de ad de …
00d020b0: de ad de ad de ad de ad de …

デザイナー:「なんか気持ち悪いんだよな・・・DEAD・・・DEAD・・・って」

ちょっと涼しくなった、ゲームショウ直前の、あの夏の日。

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