使ってない部屋からの内線

カテゴリー「不思議体験」

旅館・ホテル業にずっと携わってる俺が体験した、個人的に洒落にならなかった話。

この業界じゃオカルト体験なんて山ほどあるんだが、俺ふくめて同期ももう誰もいなくなったし、経営も変わったのでそろそろいいかなと。

東北某県のホテルでフロントやってた頃だ。
当時のフロント遅番は23時までの勤務だったんだ。

22:50くらいに夜警に引き継ぎして上がりなんだけど、その日も変わらず引き継ぎしてた。

さて上がるかって時に内線が鳴ったんだ。

そのホテルの内線は客室からの場合「2+部屋番号」なんだよね。
151号室なら「2151」ってな風に。

もちろんサービス導線の内線は違うけど、全内線の9割は記憶していた。
その時鳴った内線の表示は「2000」

俺も同期の女の子も、夜警のおっさんもみんな「えっ?」ってなった。

そんな部屋は存在しない・・・なんてことはないんだけど、使ってない部屋だったんだ。10階にあるスイートルームからだった。

その日はスイートはもちろん、10階も1フロアまるまる使ってない。
というか8階から上階はすべて使ってない。

スイートは客室ドアの前に格子戸があるし両方施錠してあるから、他の客室のやつが間違ってってこともありえない。

それでも実際内線は鳴ってるわけだし、出ないわけにもいかない。
同期の女の子はすでにガクブルで出る気もないし俺が出た。

サーっという砂嵐みたいな音と、たまに混じるザッザザッ、ゴドッっていうノイズだけ。こちらからの呼びかけにも当然返しはないし、埒が明かないので一旦切る。

で、ここで説明なんだけど、そこのフロントデスクには全内線の状態がわかる機械がついてる。
受話器が上がってるとボタンが光る、内線何番が上がってるってのがわかるだけなんだけどね。

スイートから内線がかかってきた時ももちろん光ってた。
俺が一旦切った時も光りっぱなし。
こっちの内線は当たり前だけど消えた。

そしてその状態のまま、またかかってきた。
もちろんスイートの内線ランプは光ったまま。

内線だろうが外線だろうが一旦切ったものを受話器を戻さず、ポッチも押さずにまたかけるなんてできないだろ。

客室内線だから子機はないし、なにより一瞬でも切った状態になればボタンは消えるんだ。
なのにかかってきた。

出ても最初同様のノイズだけ。
またこっちから切って、ボタンが光ってるのを確認して、またかかってくる。
これを何度か繰り返した。
向こうから切れることはなかった。

このまま繰り返してても仕方ないし、とりあえず現場へ確認に行こうとしたが、夜警のおっさんは嫌がる、同期の女の子は言わずもがな。

俺一人で確認に行くことに。
懐中電灯持ってマスターキー持って。

スイートルーム開けて、何か見たってこともなく内線確認したけど受話器は上がってすらいない。
まあそれも当然だ。
だって使ってない部屋なんだから。

試しにフロントへ内線をかけてみるも、普通に通じ、普通に会話ができる。
この間にもスイートからフロントへは内線がかかってきてたらしい。

よくわからないまま内線電話ごと外し、対応終了にした。

使ってない部屋から内線がくるのも、受話器が上がったまま内線かかってくるのも不思議だが、5台あるフロント内線のひとつをピンポイントで狙ってくるのが不思議だ。

フロント内線◯番ってよく書いてあるだろ?
その番号鳴らすとメインが最初に鳴るんだよ。

メインが通話中だと2番機がなるようになってるんだが、スイートからの内線は3番機だけにかかってきてた。

1・2番機を鳴らさず3番機を鳴らすには当たり前だが3番機の内線番号を回さないといけないんだ。

実体験だからオチっぽいオチもないし、文章だと大して怖くもないが、当事者としては洒落にならなかった話。

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