大学の友人が体験した話。
いや、『体験した』というのは違うかもしれないが・・・。
友人は考古学を専攻しており、毎年夏休みは発掘調査の手伝いをしていた。
それは、初めて発掘調査に参加したT遺跡での発掘調査の夜に起こった。
発掘調査を手伝う学生は、夜に発掘現場を見に行く組と酒盛りをする組に分かれて行動することになり、友人は発掘現場を見に行く組について行った。
夜も更け、宿舎に向かうため集合場所に行くと、酒盛り組の学生に「なんでいるの!」と驚かれたそうだ。
いきなり怒鳴られた友人は困ってしまい、一体何があったのか尋ねると、以下のような話を聞かされた。
酒盛り組は、飲み食いをしながら縄文時代の踊りなどをして盛り上がっていたそうだ。
ふと気付くと、見覚えのない学生がいる。
顔はよく見えなかったが、「そういえば、初参加の奴がいるらしいしそいつかな」と、あまり気に掛けなかったそうだ。
宴会もお開きになり、そろそろ合流して帰ろうと集合場所に行くことになった。
わいわい言いながら畑道を歩いて行くと、例の学生も集団の後からついてくる。
電灯もほとんど無い田舎道で、はぐれてしまわないか心配だったそうだ。
もう少しで集合場所というところで、その学生は急に早足になり前方の集団を追いぬくと、そのまま藪に突っ込んでガサガサと奥に進んでいき見えなくなってしまった。
集団で歩いていた学生達は驚き、そして焦った。
怪我したり、行方不明にでもなってしまったら洒落にならない。
そう思って何人かは藪に入って探そうとしたが、暗くて視界が悪く、藪の中に入っていくのは難しかった。
しかたなく、まず合流してから考えようということになった。
そして集合場所に着くと、さっき藪の中に入って行った友人が発掘現場組と一緒にいたため、驚いて声を出してしまったのだというのだ。
その後、発掘アルバイトに来ていた地元の人にそのことを話すと、その場所で山菜採りにいったおばあさんが遭難していたそうだ。
「でも、縄文人の幽霊が出たと思ったほうがロマンがあるよね」と、友人は楽しそうにそう結んだ。