当時、学生だった私は合コンの後抜け出して、男女4人で茅ヶ○の海に行きました。
深夜ということもあり人影もなく波の音だけが聞こえていました。
私達はビール片手に花火をしたり、トンネルを掘って遊び、アパートに戻った
のは午前3時ぐらいでした。
ところが、アパートの駐車場で一緒に行ったAが「ないっ!ないんだよ!!」と焦った声を出したのです。
「何がないんだよ!」と聞くと、「指輪がないんだよ!」というのです。
確かにAはシルバーの指輪をいつも着けていたのですが、それがないのです。
Aは「海だ。海で落としたんだ!今から探しに行く!」というのです。
私は「今から行っても無理だ。明日、明るくなってからの方がいい。」と簡単に言ってしまったのです。
そしたらAは「あれは大事な物なんだ。親友の形見なんだ。」と話し始めました。
私はスッカリ酔いも覚めてしまって、Aの話を聞きました。
A:「俺が中学生の時、いつもつるんでいた4人がいて、高校も一緒の所に決まったんだ。高校の入学式の時、一緒に行こうと待ち合わせしていたら一人だけ何時まで経っても来なかったんだ。俺達は寝坊でもしたんだと思い、3人で入学式に向かったんだ。結局そのつれは入学式に現れなかった。心配して、そいつの家に行ったらお母さんが泣きながら出てきた・・・。」
私:「・・・。」
A:「そいつは俺達の待ち合わせに向かう途中事故に遭って死んだんだ。その葬式の時、そいつのお母さんが、そいつがいつも身に着けていた物を俺達3人にくれたんだ。俺はその時あの指輪を形見としてもらったんだ・・・・。だからどうしても探さないといけないんだ。」
しかし、私はもうこの時間に海に行っても絶対に見つけられないと思い、Aを何とか言い聞かせ次の日、朝一で海に行くことになりました。
一夜明け、2人で昨日の海に行きました。トンネルを掘った時にでも落としたのではないかと思い、砂浜まで車を乗り入れました。私は車を降りて水辺に向かおうとすると、Aが車の横で突っ立っていました。「何してるんだ。」と言うと、「あったぁ。」と言うのです。
私は何を言ってるのだか良く分からず駆け寄ってみると、Aの足の横にその指輪が砂の上にあったのです。
本当にそれは誰かが置いたかのようにそおっと砂の上にありました。
昨日車をとめた所とは全然違う場所だし、大体の場所は記憶していたものの広い砂浜で車を降りて足を踏み出したその足の横に指輪がある確立は・・・。
私は考えるのを止めました。
そしてAのホッとした顔を見てなんだか泣けてきました。