絶対やばいぞこの部屋

カテゴリー「不思議体験」

就職し実家を離れて初めての1人暮らしが始まった。

慣れない仕事と生活で毎日バタバタ過ごしていたが、少し気になることがあった。
朝、トイレに入るとスリッパが乱れて置いてある時がたまにあった。
親が几帳面な性格で、トイレのスリッパは必ずそろえて置くようにとうるさく言われていたので、その習慣が身についていて、1人暮らしでも必ずそろえて脱いでいた。

だが忙しい毎日に比べれば大した問題でもなく、寝ぼけてたんだろうくらいに考えていた。

ようやく生活のリズムが掴みかけてきた頃、学生時代の友人を部屋に呼んで酒を飲み、泊めることになった。

俺はベッドに、その横にふとんを敷いて友人が寝ていたのだが、深夜、トイレを流す音で友人は目を覚ましたそうだ。
当然俺が入ってると思い、出てきたら交代でトイレに行こうかなと考えているとトイレのドアが開き、一瞬、水の流れる音が大きく聞こえ、ドアが閉まる音がした。

だが、部屋に入ってくる音がしない。
頭を上げて見ると部屋の扉は閉まっている。

手を洗う水道の音もしない。

何やってるんだ?と思い体を起こすと、隣のベッドで寝ている俺に気がついた。
じゃあさっきトイレから出てきたのは誰なんだ?
なるべく音を立てないようにゆっくりと立ち上がり、扉を開けてキッチンを覗いてみたが誰もいない。

トイレの電気は消えていた。
電気を点けて中を見たが誰もいない。

玄関のドアを見てカギを確認するが、カギは掛かっていたが内カギは掛けてない。

もしかして合鍵を持ってる前の住人かなにかが侵入したのかと、覗き窓から外を覗こうとドアに近づくと、「あなた、だあれ?」という少女のような声がドアの外から聞こえてきた。

驚きで体が硬直する。
空耳か?と思っていると、「ねえ、だあれ?」とまた聞こえてきた。

明らかに自分に向けて言われた言葉だと感じる。

“怒り”とか“いぶかしむ”とかの感情は感じられない、単純な子供の質問という感じの話し方だ。

固まったままの体とは逆に高速に動く心臓。
指一本も動かせず、声の主の次の行動を探っていたが何も起こらない。
声も遠ざかる足音も聞こえない。

『それを聞きたいのはこっちだよ』とは思うのだが、覗いてみる勇気がでない。

何か居ても居なくても怖い。
ちなみに友人は、もちろん俺もだが、霊感なんてものはない。

結局、覗き窓を覗くのはやめてゆっくりと後退しふとんまで戻り、俺を起こそうと体を軽く揺すってみたが起きそうもないので、ふとんをかぶって朝を待つ間に眠ってしまったという。

翌朝、その話を聞かされて、そういえばとスリッパの話をした。

「絶対やばいぞこの部屋、引っ越したほうがいいぞ」と言われたのだが、日々の生活に追われていてそれどころではない。
越してきたばかりだし金もない。
何よりようやく慣れてきた生活だ、手放したくはない。

それに友人の夢だった可能性もある。
スリッパの話をしてなかったのにトイレに関係していたのは少し気味が悪かったが、まあもう少し様子をみると言う事にした。

その後、その友人は部屋に誘っても怖がって来てくれなくなり、別の友人も何人か来て泊まったりしたのだが、そんな体験をする者は俺も含めて誰も居らず、3年ほど住み続けた。

その日以降、友人の助言から内カギは掛けるようにしていたが、トイレのスリッパは相変わらずで、たまに乱れて置かれていた。

そのうち『そろえて置くから気になるんだ』と思うようになり、わざと崩して脱ぎ捨てるようになった。

おかげで引っ越すまでスリッパのことは気にならなくなったが、今度はそれが習慣化してしまい、たまに実家に帰ったときに親に小言を言われるようになった。

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