先輩の話。
彼が親戚引き連れて、富士登山の案内をしていた時のこと。
山頂まで登り詰め、やれやれと彼が一息ついていると、甥っ子が麓を指差し叫んだ。
甥っ子:「ねぇ!あれ何!?」
見下ろす大地に見事に広がった雲海に、一ケ所だけ、不自然な切れ目ができていた。
まるでそこに見えない巨大な柱があるかのようだった。
さらにその切れ目は風の流れに逆らい、西へ西へと広がっていく。
親戚一同に説明を求められた彼だが、今までこんな現象は見た事がない。
知らないと言うのは簡単だが、それでは彼のプライドが許さない。
目を白黒させながら、苦し紛れに彼は言ったそうだ。
彼(先輩):「だいだらぼっちが歩いてるんですよ」
我ながら馬鹿げているとあきれたが、親戚一同、深くうなずいたそうだ。
でも、言われりゃ俺でも信じるしかないような雲だったぜ?
彼は頭をかいた。
まあ、でもホントにそうだとすると、その下にある町は踏みつぶされちゃうだろって話になるんだけどな。