もしこのまま着かなかったら?

今さっきの話。

俺は久しぶりの休みだったのでさっきまで寝ていた。
ただぐっすりと寝れた訳ではない。
昨晩酒を飲んでいて眠りが浅かったらしい、ずっと夢をみていた。

夢の中で俺は商店街を歩いていた。
どこにでもありそうな普通の商店街だったが、俺の知らない街だ。
何故ここにいるのかよく分からないけれど、フラフラとアーケードの道を通っていく。
道中に男の子が座っていた。
なんだかまじまじと俺を見つめてきたので「何か俺の事を知ってるような目だな、近所の子だっけか?」と思いながらも更に上へと進んで行った。

商店街は廃れた感じであまり開いている店はなかった。
最近の商店街にありがちなパターンなのかも知れない。
歩いている人もまばらだった。

・・・俺は真っ昼間からスーツ姿でこんな商店街に来て何やってんだろう。
そう思った時だった。

ぎゅっ、と左腕を掴まれた。

見ると小学校低学年位の女の子がこちらを見上げている。
そして「お母さんとはぐれたの・・・」と一言。
正直「知らねぇよ」と言いたい所だったが、不安そうなその表情を見ていたら何も言えなかった。

俺:「いつはぐれたの?」

女の子:「・・・ずっと前」

俺:「じゃあもう君が帰ったと思って家に帰ったんじゃないかな。ここからお家がどこにあるのか分からないの?」

女の子:「分かるけど・・・」

女の子はそう言って俯いた。
このご時世だ。
明るいとはいえ、人通りの少ない道を小さな女の子が一人で帰るのは心許ないのかもしれない。
何故ここにいるのか分からなかった俺は、思い切って女の子を家まで送って行ってあげることにした。

途端に女の子はニコニコと俺の側をぴょんぴょんと跳ねた。
帽子のしたで小さく揺れるお下げが可愛いい。
女の子は俺と手を繋ぎながら指をさして「あっち!」「次はこっち!」てな具合で道案内をしてくれた。

10分程で着くと思いきや、なかなか女の子の家には着かない・・・。

「まだ遠いの?」と聞いても「うん!まだ着かないよっ!」と元気よくニコニコ。
そのうち商店街から離れて住宅街からもどんどんと離れて行く。

30分は歩いた頃、俺は不安になってきていた。
何だかおかしい・・・。

俺:「本当にこの道で合ってる?もう随分と歩いてるけど・・・」

俺がそう聞くと女の子はまたニコニコと「まだだよ!」と返す。

ハァ?どんだけ遠いんだよ。バスはねぇのか・・・。

俺は女の子を送ってあげようとした事に後悔し始めた。
女の子も俺の不機嫌さを察したらしい。
急に無口になって歩きだした。

更に5分は歩いた。

俺:「着かねぇじゃん・・・」

俺はつい言ってしまった。
だってもう一時間は歩いているのだ。

女の子:「・・・ねぇ」

女の子は下を向いて声を出した。

女の子:「・・・ねぇ。もしこのまま着かなかったら?」

ハァ?やっぱり道間違えてたのか?

俺は立ち止まって女の子を見た。
女の子は申し訳無さそうに俯いている。
繋いだ手が震えていた。

女の子:「もしこのまま着かないで・・・ずっと・・・ずっと・・・歩いていたら?」

女の子はこちらを見上げた。
その瞬間俺はギョッとして思わず声を上げそうになった。
女の子は笑っていた・・・。

女の子は泣きそうになっていたんじゃなくて、肩を震わせて笑っていたのだ。
俺はとっさに手を離そうとしたが、思いの外女の子の力は強く手が離れなかった。

女の子:「ねぇ・・・お兄ちゃん。このまま家に着かなかったら?このまま家に着かなくて、お兄ちゃんも家に帰れなくて・・・それって・・・フフッ。おかしいねぇ」

こちらを見る顔は、先程のあどけない笑みはどこへやら、どう見てもあの世の人間だった。

俺:「離せ・・・」

手はびくともしなかった。
女の子はニヤニやと笑いながら俺を引きずって箱(?)の様な物に入れようとグイグイと引っ張った。

女の子:「面白いねぇ。もう遅いのにねぇ」

女の子が俺を見てそういった瞬間、いきなり横から黒い影が飛び出して女の子めがけて体当たり。
女の子は2メートル程とばされて俺を掴んでいた手は離れた。

女の子に体当たりをしたのはさっき商店街で見掛けた男の子だった。
すぐに立ち上がると俺に駆け寄ってきて「何してんだ。早く起きろー!!」と叫んだ。

ビクッとして目が覚めて夢だと分かった。
ただその直後金縛り。
怪奇現象なのか?俺を上から見つめている子供の気配がした。
あの女の子だと直感した。

ただスーッと気配が消えて金縛りが解けた俺は力が抜けて睡魔に襲われた。
最後に意識が消えそうな時に声が聞こえた。

「優しそうだったから、付いて来て欲しかったんだって。俺が言っとくから。起きたらごぼうを食べるんだよ。気を付けな。」

・・・男の子の声でした。

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