友人の話。
彼女の実家は山深い小さな村だ。
里帰りすると、決まってある現象が起こるという。
玄関の鍵は螺子を回して閉める昔ながらの構造なのだが、彼女が泊まった翌朝、必ずその鍵の芯棒がひん曲がっているのだ。
幼い頃は気にしていなかったが、成長していくにつれ、さすがに何かおかしいと思うようになった。
お祖父さんに聞いたところ「山の神サンが妬いていなさるんサ」と返ってきた。
どうやらその村の山神様は女性のようで、里に若い女性の客人が来ると、それが悔しくて悪さをするのだ、ということらしい。
「今は軽くなって良かったサ。儂の母ちゃんが輿入れてきた時は、屋根引っ剥がされたりしたもんだ。山神サンが落ち着いたんか、それとも力が無くなったのかわからないけどな」
お祖父さんはそう言って呵呵と笑った。
最近に里帰りした時も、山神様は健在だったそうだ。