A県の某市には、一見何の変哲もない三叉路が設けられている区画がある。
ところがこの三叉路、時折不可解な現象が起きるらしい。
三叉路は、傍から見ても特に不思議な様子はない。
2つの道はそのまま別の通りに抜けることが可能で、近隣住民もよく利用している。
そして、残る1つの道は、三叉路に差し掛かる前に、数メートル進めば行き止まりであるということが夜道でも確認できる。
当然、すぐにバックしなくてはならないので、この道を利用する者はいない。
しかしおかしなもので、近所の住民はこれまでに何度も、この三叉路の行き止まりの道を、スピードを緩めずに走り抜けようとする車を見ているのだ。
目撃者らはその都度「あ、ぶつかる!」と緊張するが、何故か激突音なんて聞こえてこない。
慌てて外に出て確認しても、件の三叉路には何の異常もなく、ここに入ったはずの車の影すらないというのである。
この現象が発生するのは、決まって深夜帯。
もしかすると、住民が度々目撃している車両は、この世のものではないのかも知れない。
もしかしたら真夜中に限って、この三叉路の行き止まりのはずの道は、全く別の場所へのゲートの役割を果たしているのかも知れない。
その場合、誤ってゲートに入ってしまった車とドライバーは、一体どうなってしまうのだろうか。