もしそれを見てしまっていたら

カテゴリー「不思議体験」

大学の頃、いつも通り朝起きたら、丁度目覚ましが鳴る直前の時間だった。
んで、目覚ましのスイッチ切って着替えて窓開けたら、なんかいつもより明るい。
慌ててズボンのポケットから時計取り出して見たら、いつも通りどころか1時間ぶっちぎって寝過ごしてた。

目覚ましはどうやら電池切れで止まっていたようだ・・・。
なんであとたった5分動いていられなかったのか、と毒づきながら部屋を出る。

俺は実家から大学通ってて、電車と急行乗り継いでいかなきゃならなかったんだが、確実に一本乗り過ごす=1限目遅刻確定、な時刻だった。

1階に駆け下りていくと、いつもなら部屋に怒鳴り込んでくる母親は電話口でおしゃべり中。
『なんでこういう日に限って・・・・・・』と心ん中で愚痴りながら、ジュースだけ飲んで家を飛び出した。

とりあえずギリギリで電車には間に合った。(駅のホームによじ登ったので車掌さんに怒られたけど)

そのまま終点駅まで到着。
あとは降りたホームの向かい側に来る急行に乗ればいい。
急行は乗って二駅で大学前に着くので、本読んだりとかしてる余裕はない。

俺は椅子に座るのも面倒だし、降りるときホームの階段に一番近い位置だということもあって、車両の一番前に立って、流れていく線路を眺めているのが好きだった。

そんなわけで先頭車両が来る位置に立って到着を待っていたのだが、待てども待てども列車が来ない。

『これ以上遅れると、辿り着けても遅刻じゃなく欠席扱いにされちまうだろうが・・・・・・』

そう思い始めたころ、駅構内にアナウンスが鳴り響いた。

「○○急行は××大学前駅(俺が降りる駅)の手前で事故が発生し、現在運行停止となっております。現在復旧の目処は立っておりません。お客様には大変ご迷惑を云々」

もうこの時点で、俺の中のモチベーションはゼロを振り切ってマイナスになっていたので、サボり決定。

タイミングよく背後のホームに次の電車が到着したので、それに乗って引き返すことにした。

『あーアホらしい・・・・・・』と椅子に座りふてくされていたら、「あれー?A君だよね?」と、正面に座っていた女からいきなり声をかけられた。

「久しぶりー!卒業式以来だよね!」

最初誰だかわかんなかったが、話の内容からようやく高校の同級生だと気付いた。

俺:「あー、おお、久しぶり!・・・・・・で、どちら様でしたっけ」
女:「・・・・・・相変わらず人の名前覚えないねキミは(#^ω^)」
ちなみに名前どころか顔も思い出せなかった。

隣に座りなおしてなんだかんだと世間話に花が咲いた。
女子勢の卒業後の話とか、普段まず耳に入ってこなかったので色々と現状を聞けて面白かった。

・・・・・・まぁ、耳に入ってこなくて当然だと納得する羽目になったわけだが、なによりも、高校のとき拾った子猫のその後が聞けたのが一番嬉しかった。

クラスのみんなに協力してもらって貰い手を探し回り、一人の女子の友達に無事引き取ってもらえた。
その猫は家族みんなから可愛がってもらって、今でも元気にしているそうだ。

そうこうしているうちに降りる駅に近づいたので、おしゃべりタイムも終了。

俺:「そういえばいつもこの電車使ってるんだよね?なんで今まで乗り合わせなかったんだろうねー」

多分、乗り合わせてても俺が気付いてなかったんだと思いますすみません・・・。

女:「じゃあまたねー」

そんなこんなで電車を降り、家に帰った。

運休になった事実を突きつけてやったので母親もそれ以上追求はしてこず、あとはダラダラ過ごせる一日となった。

しかしダラダラする前にやっておかねばならないことが一つ。
目覚まし時計の電池交換だ。

電池を外して燃えないゴミに入れる前に、別の機器に使えるかも?とチェッカーで残量を計ってみた。

・・・・・・まだたっぷり容量が残ってる。

改めて時計に入れなおしてみたら、ちゃんと動き始めた。

少しして、ジリリリリリリリリリリリ!とやかましい音をたてる目覚まし時計。
どうやら単なる電池の接触不良だったらしい。

ああもうどうでもいいや。
おかげで大学サボれたし、久々に懐かしい話も聞けた、うんうんお前さんがサボってくれたおかげだよ、ありがとなーナデナデ。

その後はダラダラとゲームしたりネットしたりと、実に有意義で無駄な一日を過ごした。

夕方、アイス食べながらTVで県内のニュースを観ていた。
今日の事故のことやるかなーと待ち構えていたら、ようやく件の列車事故のニュースが。

「本日○○時、○○大学前駅の手前の地点で、女子生徒がフェンスをよじ登り走行中の○○急行に飛び込みました。急ブレーキも間に合わず正面から衝突し女子生徒は即死。状況から自殺とみて県警は捜査を行っております・・・・・・」

アイスを持ったまま、全身が固まっていた
もしも、いつも通りに一つ前の列車に乗っていて、いつも通りに一番前で線路を眺めていたら・・・・・・。

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