山守に聞いた話。
木を切り倒した後、内の水分を抜くために3ヶ月ほど山に寝かせておく事がある。
「葉枯らし」という手法だが、この間に盗まれる怖れもあるので、時々見回りに行く。
ある時、葉枯らしの為に倒木を放置してある場所を見回りにいったところ、一抱えほどもある木を4m毎に玉切りした丸太のうちの一本に、まるで獣のような毛がびっしりと生えていた。
苔の一種かと思ったが、触ってみると脂っぽく、少し獣臭い臭いが漂っている。
気味が悪くなって、残りの分を碌に見もせずに山を下った。
数日後に再び見回りに行くと、その丸太だけが影も形もなく消えていた。
周囲に足跡などは特に見当たらなかったと言う。