俺は毎年夏は2ヶ月程山ごもりして修行している。
他人は変人扱いするけどね。
深山の川の近くの洞穴を寝床にして、食料は川魚や野草や蛙や蛇等・・・完全に現地調達。
文明の利器と呼べる物は一切持参しない(ナイフぐらいか)。
山では、徹底的に己を虐めぬく。
冷水に体を浸し精神統一、岩を抱いて山野を駆ける、木からぶら下がり逆さの世界を延々と眺める・・・。
まぁとにかく体を鍛えてるわけだな。
警察にも注意受けた事は何度もあるけど・・・。
それはさておき、不思議な体験も幾度と無く経験した。
それを書く。
山奥での深夜、曇り空だと当然真っ暗だ。
経験者はわかると思うが、正に墨を塗ったような闇。
そこを、気配と勘だけで駆けずり回る修行もやる。
今は慣れてきたからかなり俊敏に動き回れるけど、最初は結構怪我したよ。
これは去年の夏の話。
いつもの様に真っ暗闇の中を四つん這いになってガサゴソと移動していた。
と、川を挟んだ向こう側の藪の中からもガサゴソと物音&何者かの気配・・・。
狸か猪!?だと思って身構えた。
猪は襲ってくることもあるからね。
真っ暗闇の中の更に真っ黒な動く何者かが川の水に入る音がした。
俺は息を殺し気配を消してじっと様子を伺った。
水の中をチャプチャプと移動するソイツが、狸や猪ではなく別の物だと経験が悟った。
真っ黒なソイツは二足歩行で上流へゆっくり歩いてる。
俺の前を通り過ぎる時、一寸動きを止めたけどまたチャプチャプと上流へ消えていった。
野生動物では有り得ない、何者か・・・あれは何だったんだろうね。