それは彼からの警告だった

利用者が好きなことを書き込むノートがある。

あちこちの山小屋で見かけるもので、別段、珍しいものではない。
その日のメンバーや天気、翌日の予定などが書き込まれることが多い。

本名を明かすことが今ほど危険でなかった頃、何度も同じ男の名前に出くわした。

俺がノートを開く少し前の日付で書き込まれた、その日の山の感想と末尾の律儀な署名。
1ヶ月前あたりの日付が多かったが、前日だったこともある。

やがて、山でノートを見かけるたび、俺は彼の名前を探すようになった。
親近感に近い感情は、確かにあった。
いつか会えるのではないかと、そう思っていた。
それくらい彼と俺は同じ山へ行っていた。

彼の死はテレビニュースで知った。
ある山域で行方不明となり、数日後に遺体で発見されたのだ。

俺は半月後にそこへ行く計画だった。
彼とは不思議な縁がある。

どれほど深い縁だろうか。
結局俺は、半月後の山行を中止した。

今でも、古いノートを置いてある山小屋で、彼の名前を目にすることがある。

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