それに拝んではいけなかった

カテゴリー「不思議体験」

四国みたいに巡礼に訪れる人も多いから案内用の看板が立ってる。

それでスルーしようと思ったんだけど、もともと散歩するの好きな達だし、ちょっと急いでるとはいえ、一目見るくらいはしようと思って看板に従って見にいったのね。

さも凄い霊場があるのかと思ったら道路挟んでポツンと石碑が立ってるだけ。
なんだ・・・と思って先を急ごうとしたんだけど、そしたらどこからともなく現れた赤と黄色と青のストライプの着物来た婆さんが、なんか念仏唱えながら石碑を掃除しだしたんだわ。

うわっ変な婆さんだな・・・って思っただけで、その日は普通に昼飯買って帰ったんだ。

で次の日も例によって昼飯買いに行くわけなんだけど、なんか引っかかってその日もその霊場がある場所に歩いて行った。
そしたら案の定、着物来たストライプ婆さんが石碑掃除してる。

相変わらずダサい婆さんだなぁ・・・って思いながらしばらく眺めてまた帰ったんだよ。
あまりのダサさと異様さに気になって次の日も次の日も行ったんだけど、やっぱりずっと掃除してるわけ、その婆さん。

もう毎日見るもんだからどういう人なのかどうしても気になってきて、すれ違い様に「こんにちはぁー」って言ってみたんだよ。

そしたら「こんにちは、????大学の学生さん?」って返事が返ってきて、そのあとは天気がいいねとか、ちょっと寒くなってきたねとか、他愛もない話を少しだけしてその日は別れた。

元気で感じの良い婆さんだった。
服は相変わらずダサかったけど。

で次の日は土日休みだから行かなくて、月曜日また道を通ったら当然婆さんが掃除してたからお話した。
それからもう婆さんと話すのが昼の日課になってきて、2、3週間くらい昼は婆さんと話す生活が続いた。

それである日婆さんが「あんた毎日毎日ご飯買ってるけど、お金あるの?うちでご飯食べてき?」って誘ってくれた。

俺はお金もなかったっていうのもあるし、相変わらずストライプの婆さんに興味があったので、次の授業が始まる1時間くらいなら・・・という理由で婆さんについて行った。

霊場がある場所から5分くらい。
また急勾配の坂を登ったり下ったりしたところに婆さんの家があった。
意外に大学から近い場所だった。

家は本当に普通のおばあちゃん家って感じで、木造で畳があって、簡素な庭があった。
おばあちゃんは家に帰るとストライプの服からTシャツとダボダボのフリースに着替えていた。

俺はせっかくだし気になった事をきこうと思って、「なぜ霊場を掃除してるのか」と「ストライプの服はなんなのか」の2つを訊いた。

おばあちゃんは霊場について話してくれた。
巡礼が行われているとか、T市の出来た所以とか。
ストライプの服については教えてくれなかった。

おばあちゃんが作ってくれた煮物と人参煮詰めたスープ?みたいなのも美味しかった。
他愛もない話をして30分くらい経ったところで良い時間になったので帰ろうかと思い周りを見渡すと、リビングから見える別の部屋に大きめの仏壇があった。

白くて大きい立派な仏壇だったので手を合わせて帰ろうと思い仏壇に近づいて手を合わせた瞬間、お婆さんが信じられないくらい大きい声で「拝むな!!!!」って叫んだ。

手を合わせたまま硬直してる俺を睨みつけた婆さんは、しばらく考え込んだあと「電話番号だけここに書いて帰れ、どうなってもしらん」って言い放って紙をよこしてきた。

なんで怒られたのかもよく理解していなかった俺はそそくさと携帯の電話番号を書いて謝って家を出た。

一体なにが悪いのかよく分からなかった俺は改めて謝ったあと理由を聞こうと思って翌日も霊場に向かった。

しかし、婆さんはいなかった。

婆さんの家まで行って謝ろうかと思ったけど、昨日の婆さんの声と形相を思い出したらとてもじゃないが会いに行く気にはならなかった。

その日を境に婆さんはあの霊場には一切姿を現さなくなってしまった。

3週間後俺の携帯に知らない番号から電話がかかってきた。
霊場で出会った婆さんからだった。

こないだは怒鳴ったりして申し訳なかった、お詫びがてら家に来てくれないか?という内容。

俺はかねてから謝ろうと思っていたこともあり、次の日は大学も無い土曜日だったが、婆さんの家に向かうことにした。

翌日訪ねた婆さんの家にはこないだ行った時とは違って人気があった。

恐る恐るインターホンを鳴らすと出てきたのは若い男。
30歳くらいのガタイのいい兄ちゃんが優しい声で居間に通してくれた。

居間には7人くらいの老若男女と、ストライプの婆さんがいた。
全員神妙な面持ちで机を囲んでこっちを見ている。

俺はとりあえず謝ろうと思って婆さんに向かって「こないだはすみません」と頭を下げた。

婆さん無言。

「とりあえず座って」と男の1人が言った。
以下その男が言ったことを覚え書き。

・お婆さんの一族は代々あそこの霊場を管理してる。
・霊場に祀られているのは神様本体でなく、神様を媒介?するためのもの。薄まったもの?
・霊場に祀られるものの本体は力が大き過ぎて祀ることができない。
・白い仏壇にいるものが本体。
・拝んでしまうと力が大き過ぎて拝んだものに不幸が訪れる。
・霊場の石碑には拝んでもよい。

こんなことを男は俺に説明したけど、正直意味がわからなかった。

だまって「はぁ、すいません」ってずっと言ってた気がする。
一通り説明聞いた後、ストライプのお婆さんが「一族意外にキンキ?を行ったもんは一族が責任をとることになってるから今から言うことを実行してもらう」というようなことをいった。
もう日が沈み始めてたと思う。

俺はストライプの着物に着替えさせられて(めちゃめちゃダサかった)大勢の大人に囲まれて霊場まで連れてかれた。

大人は互いにブツブツ間接ガー直接ガーどうのこうの言ってたきがする。
また5分くらい歩いて霊場の前に着いた。
俺はもう正直ストライプの着物で歩いてる時点で恥ずかしすぎて不幸だったが、7人のうちの最初に出迎えてくれた男が俺にこう言った「いまからこの????ユエ?(聞き取れなかった、石碑のこと)に月が天上を折り返すまで触ってもらう、なにがあっても手を離しちゃいけない」

俺はもう意味がわからなかったが、この恥ずかしい着物を早く脱ぎたい一心で承諾した。
お婆さんはずっとうつむいてた。

6人の人たちは石碑に俺の右手をガムテープかなんかでキッチリ止めて、絶対なにがあっても触らないように念を押して解散した。

霊場にクソダサいストライプで取り残された俺はもうそれだけで顔から火が出るほど恥ずかしかったが、もう冬が近く月がもう大分上まで出てきたので耐えることにした。

霊場には異様に人気がなかった。
「月が天上を折り返すまで」が具体的に何時なのかわからないまま俺は石碑の裏に隠れるようにして身を潜めていた。

30分くらい経つとガムテープで固定された腕がうっ血してきた。
あまりにもキッチリ止めてあるもんだから血が止まったんだ。

緩めようと思ってガムテープに手をかけた。

瞬間、霊場の裏の藪の中から「ブォ!!ブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォ」って破裂音が聞こえてきた。
ビックリしてガムテープから手を離すと音は止まった。

心臓がバクバク言うのがわかった。
今の音は人為的なものじゃないのも何故かわかった。

それでもガムテープでキツキツにされた手はどんどん冷たくなってきて、痺れてくる。
サッと緩めてまた隠れようと思い止められてる方の手首を動かすと、また「ブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォブォ」って四方八方から聞こえる。

地獄だった。

しかも今度は鳴り止まない、声は直接聞こえてくるんじゃなくて反響して聞こえてくる感じがする。

そのうちこの意味がわからない現象が死ぬほど怖くなってきて、ガムテープを思いっきり引っぺがして逃げ返った。

2度とあそこに近づこうとは思わない。
大学も辞めてしまった。

3年前の10月の話。

昨日水曜どうでしょうの四国観てたまたま思い出した。
以上です。

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