俺の部屋、というか俺の家の各部屋には火災報知機が付いている。
天井だったり、ドアの上だったり。
一つが起動すれば家中のそれが連動して、「火事です!火事です!」「他の部屋で火災が発生しました!」の音声と共にサイレンの大合唱が始まる仕組みだ。
ちなみに、二階にある俺の部屋にはドアの横にある柱に付いている。
何でも俺が生まれる前、火の不始末で危く全焼する一歩手前まで行ったらしく、婆ちゃんがそれ以来「火」について、少々過敏になっちゃったらしい。
今思えばバースデーケーキに蝋燭なんか立ててもらった覚えもない。
まあそんな話は置いといて、事の起こりは先月の夜。
机に向かって勉強してたんだが小腹が空いてしまって、下へカップラーメンを取りに行ったんだ。
机の上を一度片づけ、下敷きで蓋をしたそれを置いて、さあ食べようとした時だった。
――ジリリリリリリリリリ!!
けたたましいサイレンと共に、「火事です!火事です!」って火災報知機が鳴りだした。
慌てて振り向いた時にはもう、家中でサイレンと警告の声が響いていた。
その後、寝室を飛び出してきた婆ちゃんや夜中に叩き起こされた家族にこっぴどく叱られ、もう夜食にラーメンは食べまいと誓ったんだ。
そう、カップラーメンの湯気で鳴ったとばかり思ってたんだよ。
ついこの前までは。
その日、と言ってもこの前の日曜なんだけど。
仲のいい友人数名と部屋に集まって、ゲームやってたんだ。
軽い笑い話のつもりで、近くにいたAにその話をした。
「・・・・・・って話でさ。笑えるだろ?」
「ラーメンの湯気で鳴るのか・・・・・・ん?ちょっと待てよ」
俺の話を聞いていたAがおもむろに立ち上がり、件の火災報知機にに近づいてじっと眺め始めた。
そしてこっちを振り向くと呆れたような声で、「・・・・・・お前、冗談言うなよ。これ熱式じゃねえか」って。
「ん?熱式って?」
「そのまんま。熱に反応して鳴りだすタイプで、風呂場とか蒸気の多い所に普通つけられるから、ラーメンの湯気程度で鳴る訳ないんだよ」
あーあ馬鹿らし、何ていいながら歩いてくる友人を余所に。
俺の目線はずっと火災報知機から離す事が出来なかった。
それでもまだ「壊れたのかな」と無理やり自分を納得させて、無理やりゲームに目線を移したとたんだった。
――ジリリリリリリリリリ!!
突然サイレンが鳴りだした。
うわぁっ、何だ何だ!?
騒ぎ立てる俺達の耳に、続く音声が聞こえてきた。
「火事です、火事です!他の部屋で火災が発生しました!」
・・・・・・後で知ったが、鳴りだしたのは婆ちゃんの部屋の火災報知機だった。
家族の中でも人一倍「火」について敏感だった婆ちゃんが、無論火気を扱っていた事実もなく、そればかりかサイレンが鳴りだすまで部屋の電気を消して昼寝していたという。
そして昨日、業者に頼んで点検に来てもらったが、どれも異常なし。
1度ならず2度までも続くと流石に気味が悪い物だけど、未だに原因さえ分からない。
次はいつ鳴り出すのか、気になっている自分がいる。
というか、一体何を知らせようとしてるんだろうか。
ただの誤作動だったら、それでいいんだけど。