子供の頃、山裾に開けた原で遊んでいると、不気味な物を見つけた。
川の中程に緑色の物が引っ掛かっていたのだ。
一番の怖い物知らずが水に踏み込み、それを手にして帰ってきた。
間近で見た皆が皆「何だこれ?」と考え込んでしまった。
大きさは自分たちの二の腕くらい。
緑色でブヨブヨと柔らかい。
中程が肘みたく曲るようになっており、端には指にも見える突起が三本。
間の膜は水掻きにも見える。
そして何より、えらく生臭い。
知り合いのお爺さんが通り掛かったので、呼び止めて聞いてみた。
「こりゃカワッパの腕だ。腕抜けといってな、あいつらの腕を引っ張るとポンって抜けるんだ。時々そそっかしい奴腹がいて、こうやって下流に流しちまう。さぁ川に返しておやり。そのうち拾いに来るからな。うっかり持って帰ったりすると、家まで取りに来るぞ」
そんな気味の悪い代物を、持って帰ろうとする子はいなかった。
言われた通り、元の川に流してやったという。
「あれ、持って帰ってたらどうなってただろうな。河童が見られたのかな?今考えると惜しいことしたかも」
彼はそう言って苦笑した。