知り合いの話。
地元の山中に鍾乳洞があり、その奥には割と大きな地底湖も存在しているという。
真っ暗な上に深さもあるので、遊泳することは禁止されている。
ちょっと昔、そこで溺れた男子学生があった。
グループで洞窟に入り込み、勝手に泳いでいたものらしい。
溺れたのは一人だけだったが、捜索も空しく、ついに遺体は見つからなかった。
その後、おかしなことが起こり始めたという。
件の鍾乳洞からは小さな川が流れ出しているのだが、毎年、事故が起こった時節になると、奥から黒い髪の毛がごっそり束になって流れてくるようになったそうだ。
「行方不明になった学生の髪なの?」と私が聞くと、知り合いは首を振って答えた。
「いや、その毛がどれも凄く長いんだ。大体溺れたってヤツ、スポーツ刈りだったし」かといって、誰かがわざわざ長髪を流しに来るとも思えない。
現在、鍾乳洞に近よる者は誰もいないそうだ。