山の怪を実体験してしまった

カテゴリー「不思議体験」

この間、バイクでツーリングに出かけた時の話。

その日は新車慣らし中だったので、流れの速い幹線道路を避けて、交通量の少ない山の方の道を走ることにした。

対向一車線、荒れた舗装の細い道をトコトコ走っていると、それまでは曲がりくねっていた道が急に真っ直ぐになり、視界が開けた。

唐突に舗装が良くなり、片道一車線の立派な道路が現れた。
それまでは道路の両脇はボロいガードレールだったのが、真新しいコンクリートで法面が固められている。

両脇のコンクリートが高く、周囲の景色は見えない。
真っ直ぐに青い空だけが見えて、ちょうど用水路の中に入ったような感じだった。

荒れまくった路面に辟易していた俺は、これは良い道路だ、とばかりに慣らしの上限回転数まで引っ張って道を飛ばした。

しかしいつまでたっても看板や交差点、コーナーすらなくずっと同じ景色。

北海道ならともかく、本州の山奥にこんな長い直線道路があるはずない。

かなり不気味だが、ガソリンの残量もまだ余裕があったので、こうなったら行けるところまで行ってやろうとそのまま直進。

そのまま30分くらい走り続けると、両サイドの壁が切れて正面にガードレール、その向こうは断崖絶壁・・・・・・という山肌のT字路にたどり着いた。

変な体験をした後だし、早く帰りたくはあったがバイクを停めてスマホで現在位置を確認するのも面倒。

特に看板表示も無かったので、とりあえず山を下りる方向に向かう事にした。

適当に走っていればそのうち道路標示の看板くらいあるだろうし、それに従っていけば太い道路に着くだろうと楽観視していた。

再び曲がりくねった道を下っていくと、山間の集落に到着した。

十字路の看板が、左折すれば良く知った2桁国道に出られる事を示していたので、その通りに進む。

民家の立ち並ぶ、生活道路のような細い道を抜けると、突き当りに閉店した雑貨屋があった。

いい感じに昭和の風情が漂っていたので、普段ならバイクを停めて記念写真でも撮るところだ。

しかしその日は変な直線道路の件でさっさと帰りたかったので、更に看板に従って右折。

またしばらくグネグネと山道を走って行くと、見覚えのあるT字路に出た。

右手には閉店した雑貨屋。

先程は雑貨屋を正面にT字路を右折した。
右手に雑貨屋が見えるということは、同じ方向から帰ってきてしまった事になる。

雑貨屋を右折してから、他に行ける道や施設は見当たらなかった。

ゾッとした。

もう一度看板に従って走る気にもなれず、今度は直進。
またしばらく山道を走り、気づくとまた右手に雑貨屋があった。明らかに道の繋がりがおかしい。

地図を確認しようかとも思ったが、それよりもこんなところに停まりたくなかった。

今度は左折して、元来た道へ戻る。

初めは民家の間を抜けたはずの道だったが、何故か途中で農道へ出た。

もう訳がわからなかったが、雑貨屋に引き返すわけにも行かず、そのまま農道を抜けると片道一車線の道路に突き当たった。

今度は立派な青い看板があり、それに従って走って、ようやく幹線道路に出ることができた。

オチはない。

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