運転手はそこを通りたくない

カテゴリー「不思議体験」

その日は仕事が長引き、帰るのが深夜になったという。

顔馴染みのタクシー運転手を呼び、送ってもらうことにした。

道中、その運転手がおかしなことを言う。

「山越えのルートを避けていいですか?」

かなりの遠回りになる。

拒否すると、

「料金はいつも通りでいいです。いや負けてもいい。お願いします」

さすがに気になって理由を問うてみると、山越えルートの途中に峠道があるのだが、深夜を過ぎるとそこは通りたくないのだと言う。

「お客さんがいようがいまいが、あれはお構いなしなんですよ」

それだけ言うと、運転手は口を閉ざした。

それ以上はどうしても教えてもらえなかったという。

結局、いつもより安い金額で、遠回りして帰宅したのだそうだ。

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