怖いタクシー運転手

カテゴリー「不思議体験」

発端は友人のNさんが持ってきた写真です。
Nさんの同級生で、ちょっと悲惨な亡くなり方をした人がいるという前置きで取り出された写真には細身の、ちょっと内向的な感じのする女の子が映っていました。
仮名をRさんとしておきましょう。

Nさん曰く「親の離婚でY県からH県に引っ越しちゃって、それからしばらくして事件が起こったの」その事件の内容というのが、Rさんがコンサートを見に行った帰り、夜中近くにタクシーを拾ってから行方不明になり・・・それから数ヶ月後、日でりで干上がったダムの底から無残な遺体となって発見されたというものでした。

しかし偶然にも、私はその遺体発見の件を当時新聞で読んでいたのです。
もちろんそれは私がNさんとも知り合う前のことでした。
妙な縁を感じつつ、その時はそれで話が終わりました。

Nさんはその頃ほぼ休みのたびにうちに遊びに来ており、私も信頼していたので仕事などで遅くなる時は先に鍵で開けて部屋で待ってもらうようにしていました。
その日も、遅くなるのが分かっていたので先に部屋に入っていてもらったのです。
そして私が仕事を終えたのは夜23時過ぎ。
とぼとぼと天神の町を歩き大丸前でタクシーを捕まえたのが23時半でした。

しかしこのタクシーの運転手というのが粘着質というかなんとも気持ちの悪い喋り方でした。

タクシー運転手「お客様どちらまで?」

私「あんまり遠くないんですけど・・・○○保育園の前のアパートまで」

タクシー運転手「ん~、そんなんありましたっけ?」

私「ああ、はい。小さいところなので知らない方も多いですけど」

タクシー運転手「・・・私ですねえ、福岡に来てまだひとつきしかたってないんですよねぇ」

私「はあ」

タクシー運転手「前はH県にいたんですけどねぇ」

私「H県?」

タクシー運転手「だからこっちの地理、まだ慣れてないんですよ~」

だからどうした、運転手ならちゃんとしろとか思っていると・・・何故か急に脇の下がかゆくなり始めました。
どうしたんだろう、と思いながら『H県』というキーワードで急に思い出したのはRさんのこと。
何故そんなことを思い出すんだろうと思いつつ、私と運転手の会話は続きました。

私「・・・・・・そ、そうなんですか」

タクシー運転手「それから転々と、ね。・・・・・・・あれ?どうされたんですか?」

私「い、いえ・・・ちょっと仕事が忙しかったので、疲れて・・・」

タクシー運転手「そうですかぁ、仕事帰りだったんですかぁ」

私「はい」

タクシー運転手「大変でしたねぇ」

私「はい・・・・・・」

かゆみは何故か収まらず、全身に広がっていきました。

タクシー運転手「具合悪そうですが、大丈夫ですか?」

私「大丈夫・・・・・・です」

タクシー運転手「そうですか~」

私「あの、どうしてH県からこちらに?」

タクシー運転手「いや、それがねえ」

私「・・・・・・?」

タクシー運転手「・・・・・・あんまり良くないコトしちゃってさぁ」

私「よくないこと・・・って?」

タクシー運転手「・・・・・・まあ、それはご想像におまかせしますよ・・・・・・」

私「・・・・・・・・・・・・」

タクシー運転手「あ、つきましたよ。上まで送っていきましょうか?」

私「い・・・いえ、結構です!」

アパートにつく頃、本当は立ち上がれないほど全身が強張っていましたが、運転手が何故か怖くて
お金を払った後タクシーから這って出ました。

自分の部屋は4階だったので、階段しかないため階段も這って上りました。
自分の部屋に辿り着き、私はひたすらドアをノックしました。
Nさんが慌てて鍵を開けてくれ、中に入れたのですがすぐに私の様子がおかしいことに気付いたようでした。

その頃、全身のかゆみは熱さと痛みを伴い始めており、私は彼女が用意してくれていた夕飯を食べるよりも先にお風呂にはいることにしました。
しかし身体が思うように動かない上、お湯を被れば激しく痛み、水を被っても同様の痛みがあり
また這い出るしかありませんでした。

自分がどうなっているのか不安で不安で、とりあえずどうにか服を着込んで居間に戻ると、Nさんが叫ぶように言ったのです。

「どうしたの!?」

顔が、まるでお岩さんのように膨れている、と。

慌てて姿見を除き込んだ私もまた、悲鳴を上げたくなるような状態でそこに映っていました。
道理で動かないはずです。
こんなにも膨れ上がっているのなら。
手も足も、指が曲がらないほどに腫れ上がっていました。

何があったの、と聞くNさんに、私は先ほどのタクシーの中でのことを話しました。
Rさんのことを急に思い出したこと、そう言えば失踪当時と自分の行動が重なると思ったこと。
Nさんは顔を青褪めさせました。
そして、今日私に言おうと思っていたらしい新しい情報を話し始めたのです。

Rさんを乗せたタクシー運転手が、その晩から姿を消していること。
ダム底から見つかった遺体には乱暴の後があったこと。
・・・・・・曖昧だった、Rさんのタクシーに乗車した時間(最後に目撃された時間)が午後23時半であったこと。

運転手の「良くないことしちゃってさぁ」という言葉が頭の中にこだましました。
そのセリフは、Nさんの中でも引っかかっていたようです。

そして、その直後でした。
部屋の中の雰囲気が急に変わり、何かあまりよろしくないものが来ている感じがしました。

Nさんも私も、それがRさんであることをすぐに察しました。
私は思わず叫んでいました。

「なんでこんな目に合わせるの?」

Nさんも、また「彼女(私)関係ないじゃない」とRさんの気配のするほうへ叫んでいました。
するとRさんの声が頭に・・・。

「私を・・・・・・忘れないで欲しいから」

私たちは必死に、忘れないから、だからこうやって事件の話もしてるんだから、と宥めました。
それからほどなくRさんの気配は消え、私のホラーメイク状態の症状も少しずつ治り始めました。
完全に治る頃、時計は夜中の2時を過ぎていました。

その後、もう一つだけ分かった事実があります。
それは、問題の運転手が各地を転々とした後、福岡でタクシー運転手をしていたということでした。
それも、ちょうど私があんな目にあった頃のことです。
それ以後、タクシーの運転手の足取りは掴めていません・・・。

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