20年前、北関東の小さな町。
オレらは小学校の裏山でよく遊んでたんだが、奥の森は広くて危ないから入るなと言われていた。
しかし、ある日の土曜日の午後、友人四人で探検ごっことして森に入った。
リュックに荷物詰めて、ワクワクしながら散策してた。
ある程度奥に進んだところで、岩に腰かけておやつを食べていると、友人の一人がシーッと会話を制し、指をさした。
その方向を向くと、なにやら妙な生き物がノシノシと二本足で歩いている。
大人ほどの背丈で腹がでており、足は短く、割に手は長い、身体は毛がなく、ツルッとした灰色だか緑色だかが混じったような全身粘膜に見えた。
とにかく見たこともない生き物・・・。
こちらに気がついていないようだったが、オレらの仲間内でも小心者のはずのAくんがなぜかそいつに向かって空き缶をぶん投げた。
空き缶は当たりはしなかったが、そいつはこちらに気付き、向かってきた。
目玉がやたらでかくて魚みたいな感じで視線が読めない。
しばらく金縛りに遭ったかのように動けなかったが、友人がワッと叫ぶと同時に全員慌てて逃げ出し、目印に置いておいたおはじきを頼りに森を出た。
途中振り返ってみると、そいつは走っているようだったが、足が遅く、俺達は余裕で逃げ切れた。
リュックを忘れたため、母ちゃんに怒られて、オレはその話をした。
母ちゃんは全く信用してなかったが、俺達全員が揃って同じ証言をしたため、かえってなにか悪いことをしているんじゃないかと疑われ、最終的には保健の先生にカウンセリングのようなものを受けさせられるまで話が大きくなってしまった。
俺達は困ってしまい、もうこの話はしないようにした。
友人が描いた似顔絵から、ギガデーモン(似顔絵がドラクエのモンスターに似てただけ、本物は全然違う)と呼ばれたその生物は俺達の学年の間で流行り、大人に内緒で何度か捜索隊を結成したが、その後見ることなかった。
森でよく仕事をしていた友人の祖父に聞いてみたこともあるが、もう何十年もこの森を見ているが、そんなものは見たことも聞いたこともないとのことだった。
今考えると恐ろしいことをしていたな、と思うが、当時なぜか不思議と恐怖心は起こらなかった。
俺はもう地元を出たが、今でも当時の友人と飲むとギガデーモンの話が出る。
何なんだろうなギガデーモンは?
そういう妖怪でもいるのかな?