先に言っとくけど怖い話じゃない。
うちの高校は校内の裏手に小川っぽく水が引いてあるんだが、そのある特定の位置のレンガの上にいつも仏花1本とジョージア(缶コーヒー)が置かれていた。
さてはそこで誰か死んだりしたのかと思いきや、その花とジョージアを毎週木曜日の朝に置いているのは野球部で、その費用は野球部のOB会から寄付されており、そのOBたち自身も事情はよくわからないらしい・・・。
ただ昔からの伝統で置いているようだった。
俺は校内新聞部だったので、みんなでわが校最大のミステリー「ジョージアの謎」についてOBを当たって調べたんだが、40代50代の古参OBが知らない一方で、1980年代半ばにはもう習慣があったらしい。
ただ、その頃は仏花を添える習慣はなく、木曜日だけではなく毎日で、飲み物はレンガの上ではなく水中に沈めており、品目もジョージアではなくポカリスエットであり、そして1本ではなく野球部の人数分が用意されていたという。
・・・・・・そう、どうやら最初は「美味しく飲めるように清流で冷やしておく」ってだけだったようなのだ。
それが途中、小川が汚くなって来たために人気が無くなって需要が数本だけになり、飲みたい人だけが自前で買ってきて冷やし、いつかのタイミングで勝手に飲むようになった。
結果、縁の薄い一般部員からは「あの缶は誰かに捧げている物」という誤解が加わってしまった。
そして1994年度、おそらく最後まで飲んでいたであろう人物が卒業したことにより缶が設置されなくなったわけだが、それに気付いた新部長が危機感を抱いて部費から缶代を落として設置するようにした。
いつしか、缶の横には仏花が追加され、OB負担や木曜設置といった慣習もできあがり、あのミステリアスな「ジョージアの謎」が完成されたのだった。
ちなみに、発端の94年度部長によれば「それまでいつも缶コーヒーが置かれていたのでその通りにした」ということで、「ポカリの謎」ではなく「ジョージアの謎」になった原因は93年度卒業生の嗜好だったようだ。
こうして「献花」という誤解が晴れたこの習慣だが、その結果、途絶えることになってしまったかというとそうではなく、野球部の長い歴史に対する敬意とユーモア、そして願掛け的な意味が加わり、花の種類をもう少し楽しげなものに変えてその後も続いている。