ランダムキャンプ(前編)

カテゴリー「不思議体験」

※このお話には後に投稿する「ランダムキャンプ(後編)」があります。

1年前に仲間内でとある山へキャンプへ行った時の話をしようと思う。
大学が夏休みに入る少し前、高校の頃からの仲間のAから電話があった。
Aとは進学先が別々になって実際に会う機会も減っていたが、時々こうやって電話が来ている。
その時の話は、高校の頃のいつもの仲間で集まって久々に何かしないか?という内容だった。

夏休みに入ってすぐ、俺達はAのアパートに集合した。
面子は俺、A、それとBとCの4人、高校の頃特に仲の良かったメンバーだ。
最初は近況などを話していたが、そのうち本題になり、さて、何をしようかということになった。

が、集まっても何も安が浮かばない・・・。

そうこうしていると、話に加わらずAのPCで何かをしていたCがおもむろに「グーグルマップで適当に見つけた場所にキャンプにいかね?」と言い出した。

俺とAとBが「はぁ?」と言うと、Cは結構大真面目に「いやいや、おもしろそうだろ?目的地もランダムで全く知らない場所にキャンプ行くんだぜ」と得意げだ。

でもまあ、たしかに行き当たりばったりは面白そうではあるかもしれない。
俺がそう思っていると、Bもそう思ったのか「よし、じゃあ“キャンプ場”で検索してみようぜ」と言ってきた。

するとCが「それじゃつまんなくね?いっそそういうキャンプ場とかじゃなくて、ほんとに人気の無い山奥とかそういう場所にしね?」と言い出した。

確かにおもしろそうだ。
俺達はその時そう思った。

そして、適当に山っぽい場所をあちこち探し回っていると、周囲に人家もなく、ただ林道らしき道が1本通っているだけの場所を中国地方のある場所に見つけた。

拡大してみると、川べりで少し開けていてキャンプにも最適そうに見える。
俺達は東日本出身だ、西日本方面のことは殆ど知らないし、地理的にも立地的にも俺達の理想に合致しているように見えた。
キャンプ地はその場所に決定した。

当日の朝。
Cがバイトして買ったというボロい軽に乗り込み、俺達は出発した。
そして、その日の夕方には目的地近くに到着した。
その日は近場にあったスーパー銭湯のような場所で食事と風呂を済ませ、そのまま近場の公園のベンチで寝た。

翌日。
近場のコンビニやスーパーで3日分の水や食料を買出しし、俺達は目的地へと向かった。
携帯で地図を確認しながら山道をどんどん進んでいくと、とうとう携帯の電波が届かなくなってしまった。
が、今まで通ってきた道が検索した時に見つけた林道だったので、そのまま道なりに進むとすんなりと目的地の開けた場所に到着できた。

現地についてみると、その場所はグーグルマップの航空写真で見るよりもずっといい場所だった。
すぐ横に川が流れていて水も綺麗だ、それに川沿いの開けた場所はかなり広くジメジメ感もまるでない。

俺達はすぐにキャンプの準備を始めた。
車から荷物を運び出し、テントを建て石を並べてかまどを作り、薪を集めたり雨対策にテントの回りに溝を掘ったりしたのだが、早めに到着したこともあり午後2時過ぎ頃には全ての作業が終ってしまった。

暫らく川に石を投げて水切りなどをしていると、Aが「暇だしちょっと回りを探索してみないか?」と言ってきた。

暇だった俺達は特に反対意見もなくそうする事にした。
川が狭くなっているところから対岸に渡り、来たときから見えていた対岸の砂利道を上へ上へと進んでいった。
暫らく進んでいると、横道がありその先の森が開けて白いコンクリート製の壁の小さな建物が見えてきた。
その建物は1階建ての長方形で、山の中にぽつんとあるにしてはやたら小奇麗なのだが、一見してどういう目的の建物なのかさっぱり解らない。
窓も少なく、その窓も全てブラインドが閉じていて中をうかがい知る事もできなかった。
何かの管理事務所のようにも見えるが、そのわりには他に建物らしきものも周囲に無い。

俺が「なんだこれ?家じゃないし、何?」といったが、誰も何なのかさっぱり解らず答えは帰ってこない。

とりあえず俺達はそのまま周囲を探索してみる事にした。

探索してみてわかったのだが、この建物はどうも少なくとも今は使われている痕跡が無いらしいことだけは解った。
理由は簡単で、表の方は砂利が敷いてあるので目立たなかったが、裏の方は雑草が生い茂り明らかに何年も放置されているのが解ったからだった。

すると、表のほうにいたAが「おーい、こっち来てみろ」と俺達を呼んだ。

Aの所に行ってみると、なんとAは建物のドアを開けていた。

C:「ちょ、おまえ、流石にそれはまずくないか?」

B:「鍵とかかかってなかったのか?」

そう言うと、Aは楽しそうに「鍵掛かってなかったぞ、ドアノブ回したら普通に開いたし」と悪びれる様子もなく返してきた。

そして俺も「でもこの建物、明らかに廃墟じゃね?鍵は元から開いているんだし、ちょっと入るくらいならいいだろ、なんの建物か興味あるだろ?」と、俺がそういうと、Aも同意してきた。

BとCも本気で止める様子はなかったのか「ちょっとくらいならいいか」と返してきた。
そこで俺達は中に入ってみる事にした。

中に入ると、室内には調度品のようなものや家具のようなものは何もなかった。
長い事放置されているようで、部屋の中は非常に埃っぽい。
10畳分くらいの長方形の部屋があるだけなのだが、変わっているのは、部屋の真ん中に下へと続く階段があることだ。

4人とも黙り込んでしまった。

この状況、流れ的に今更下に行かないわけにはいかない。
問題は誰がそれを言い出すかなのだが、こんな怪しい建物のしかも地下へと続く階段、あからさまに怪しすぎて誰もその一言をいえないでいた。

暫らくの沈黙の後、最初にBが口を開いた。

B:「下真っ暗だよな?懐中電灯ないし、装備整えて明日で良いんじゃないか?」

最もな意見だった。
そしてこの提案をしたBに俺は心のそこで感謝した。
しかし、Cが唐突に「明かりなら携帯画面で十分じゃね?」と。

しかもAもそれに同意のようだ・・・。
俺とBはここで断れば確実に2人にヘタレとからかわれるのが目に見えていた。
ぶっちゃけ怖かったが、4人で下へと降りていくことになった・・・。

階段はそんなに長くなかった。
下に下りると、真っ暗でよくは解らないが、どうやら6畳くらいの正方形の部屋のようだ。
上と違うのは、なぜか部屋の真ん中にユニットバスのバスタブが置いてある。
部屋の中にはそれ以外何も無いようだ。

バスタブの中を携帯の明かりで照らして見ると、中で何かを燃やしたような痕跡があったが、燃やしたものは取り出したのか黒い煤があるだけで他には変わった物は何もなかった。

俺達は拍子抜けしてしまい、「なんだこれだけか」、とキャンプしている場所に戻る事にした。

階段を上る時に、俺はなんと説明したら良いのか、一瞬人の気配というか、後ろから誰かが顔を近づけると気配でわかるよな?あんな感覚を感じた!

驚いて後ろを振り向いたのだが、最後列の俺の後ろに誰かいるわけでもなく、上の3人が「どうした?」と声をかけてきたが、俺は「なんでもない、気のせいだ」と、そのまま階段を登った。

キャンプ地に戻ると、結構時間が過ぎていてもう夕方の5時近くになっていた。
俺達は夕飯の準備をして飯を食った。

その晩。
俺達4人は焚き火を囲んであれやこれやと、とりとめのない話をしていたのだが、ふと気付くとBがやたらと背後を気にして何度も後ろを振り返っていることに気が付いた。

俺が「B、どうした?なんかいるのか?」と聞くと、Bは「あ、いやそれが・・・いやなんでもない」というと黙ってしまった。

なんか変な反応だ・・・。
他の2人も気になったのか、まずAが「おいB、なんか気になることあるならいえよ、余計に気になるだろ」というと、Cも「変に隠すと逆にこえーよ」と冗談半分に言った。

するとBが「ほんとなんでも無いから、ただちょっとなんか視線を感じるんだよ、でもどう考えても気のせいだろ?俺達以外に人の気配無いし」と言い出した。

確かに変な話だ。
でも俺もさっきのことを思い出して少し気になり始めた。
AとCも気になったのか全員で懐中電灯を持って周囲を確認する事にした。

懐中電灯であちこちを照らしてみたのだが、やはり人影も動物らしき姿も何も見えない。
するとCが突然「うおっ!」と声をあげて俺の方へ振り向いた。

そして、俺に「今お前俺のすぐ後ろにいた?」と変なことを聞いてきた。

もちろん俺はそんな事はしていない、Cには近付いてないことを伝えてCに事情を聞くと、昼間俺が感じたのと同じように、自分のすぐ後ろに人の顔があるような、そんな感覚を感じたらしい。

何かおかしい。

俺がそう思っていると、1人で川の方を見ていたAが「おい、なんかおかしいぞ、ここなんかいるぞ」と、俺たちのほうにやってきた。

俺は「なんかってなんだよ、はっきりいえよ」と言うと、Aはなんだかわからないのだという、なんだか解らないが、とにかく視線と気配をさっきからずっと感じるんだという。

全く要領を得ない。

埒があかないと思った俺は、とりあえずテントに入ろうと3人に促しテントに入る事にした。

ランダムキャンプ(後編)へ続く

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