四国のとある山での体験談です。
天然のわさびが食べたくなると採りに行く山があるのですが、その日は夕方近くに登りはじめました。
林道に車を止めて、沢沿いに10分くらい上がったお手軽な場所なんです。
斜面がきついのと杉林の中で鬱蒼としているせいか、あまり知られていな場所。
私自身、過去に20回程度は来ていますが、今まで誰にも出会った事はありません。
取りつきは沢からですが、5分ぐらい上がれば細いなだらかな山道へと出ます。
その山道はここが始点らしく上に続いていますが、これより下は杉の木に塞がれて無くなっています。
その山道を無視してまだ上に登りますと、一段、二段と段々畑みたいな感じで沢の水を引き込み、畳3畳ほどのスペースで水田みたいな場所が確保されています。
その中にわさびが群生しています。
そういうのが4段あるのですが、水を引き込む為に使ったトタンや木々が朽ち果ててほぼ土に埋もれかけています。
しかし、朽ち果て欠けてもそれらは十分機能しているので、まるで「わさびランド」って感じで採り放題なんです。
何十年か前は誰かが管理してわさびを育てていたのでしょう。
チョロチョロという水の音を聞きながら、大き目の根っこを探します。
葉っぱの茂り具合だけでは根っこの大きさが判断出来ず、小さければ埋めなおし、大きければキープ、そういうのを繰り返していると辺りはかなり暗くなってきました。
水も冷たく指先がかじかんできたので、そろそろ帰ろうかと思い始めた頃、水の音に混じって人の話し声が聞こえるのです。
ワイワイ言いながら2、3人が上がってきているような雰囲気です。
声の雰囲気からしてオバサン軍団の様な感じ。
「暗いのにきつい角度をようやるわ・・・ここはひょっとしたらまだ管理されてんのか?)」
疑問を抱きつつ、声のする方向へと移動して確認します。
しかし誰もいません。
薄暗いながらもかろうじて、先ほどのなだらかな山道は見えています。
自分の車までは杉の木のせいで見えませんが、ほぼ直線的に急登してこないとここの場所にはこられないので、誰も居ないのは一目瞭然なのです。
もし管理されているわさびなら、私の方が怒られます。
埋め戻そうかとも思いましたが、いつのまにやら人の気配は全然無くなっていまいました。
おかしいなぁ・・・と思いつつわさびを入れたコンビニ袋を持って振り返ると、10メートルほど離れた場所に黒い丸いモノが・・・。
よく見るとモノでは無く、そこの空間だけやたら黒いのです。
全体的に薄暗い中、直径2メートルくらいの空間がやたら黒い。
黒すぎる・・・。
どう目を凝らしてもよくわからない・・・。
初めて見るモノです・・・。
なんかフワフワしている丸い黒い空間・・・。
?と思っている瞬間にそれがブワッって移動してきて私の体を突き抜けて、どこかに行ってしまいました。
アッと言う間でしたが、風圧はもちろん、ショックも何も感じません。
とにかく私をめがけてぶつかって来たのです。
不思議と恐さもありません。
それが何かわからないから怖がり様もありません。
呆気にとられているので判断ができません。
ふと腕を見ると産毛が逆立っていました。
思い出して書くと長ったらしいのですが、その黒いモノを見つけてから2秒も無かったと思います。
何あれ??、ぶわっ!!(Д)゜゜毛が逆立つ・・・。
ライトも無い暗い中、必死こいて下りました。
オバサンはどこにも居ませんし、鳥のさえずりや風も無く全く無音でした。
沢の音が聞こえだしたのは、自分の車が見えた瞬間でした。
体験したままを書きましたが、今思い出してもよくわかりません。
「オバサンたちの声」とのかかわり具合もよくわかりませんが、何かわからんモノが山には居ると思います。
それからも何度と無くそこへ行っていますが、夕方は避けています。