バザーの鏡

カテゴリー「不思議体験」

10年くらい前にバザーで大きめの鏡を買った。
婆ちゃんがどうしても「買ってあげる」って言うので・・・。
右下に子犬の絵が付いてるんですが、正直可愛い鏡ではありません。
家に帰って気が付いたのですが、裏に小学生が書いたような名前がありました。
それは友人の名前でした。
仮名で「アキ」とします。

私は高校生なのですが、アキもずっと同じ進路で同じ高校です。
アキに鏡の事を聞くと、中学の頃には家になかったそうで、なぜか突然なくなったそうです。
友人の鏡だったこともあり、自分の部屋に置くことにしました。

当時の私は深夜にラジオをつけたままじゃないと眠れなく、時々三時を過ぎてもなかなか眠れない時がありました。
何となく鏡のほうを見たとき、鏡に何かが写っているのがわかりました。
ポスターが写ってるなって感じで何気にずっと見つめてると、それは正座した知らないお婆さんでした。
ビル掃除をするような作業服を着ています。

気持ちが悪いことに、部屋の電気は消してるのに鏡の中がハッキリ見えます。
暗闇でテレビを観ている感じです。
2秒位しか見てないのですが、いまだに脳裏に焼き付いてます。
薄緑の作業服を着たお婆さんが正座して、赤ちゃんを抱いて・・・抱くというより、両脇を持ってこっちに赤ちゃんを見せつける感じです。

翌朝すぐに鏡を倉庫にしまいました。
夜のことは誰にも言いませんでした。

1年後修学旅行でアキと一緒の班になり、夜に鏡の事を話しました。
まず遠回しにお婆さんの事から・・・。
お婆さんは一年前に亡くなったそうですが、マンションの管理人だったそうです。
私は鏡の人はアキのお婆さんと確信しました。
そしてあの夜の事を詳しく話しました。

結局アキは赤ちゃんを抱いてる意味がわからないと言ってましたが、修学旅行から帰って数日後、アキが深夜に電話をしてきました。
お母さんに何気に鏡の事を話したそうで、アキのお母さんはその話を聞いて号泣して詳細を教えてくれたそうです。

アキが中学生の頃、お母さんは妊娠したそうです。
アキも今知ったとか・・・。
妊娠が分かった日、アキの祖母(鏡のひと)、父、母の三人で朝まで話し合ったこと、父はとにかく「おろせ」の一点張りだったこと、祖母は部屋の隅で鏡の前でずっと泣いていたこと・・・など、くわしく教えてくれました。

アキのお母さんは鏡に写る祖母の泣き顔が忘れられず、鏡を手放したそうです。
鏡はまだ持ってます。
アキがどうしても持ってて欲しいと言うので・・・。
綺麗事のようになりますが、いつかアキが子供を産んだときにその子を鏡に写してお婆ちゃんを喜ばすって言ってます。

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