いわゆる山ではなく、実家の庭で体験した話です。
実家は国道のそばで、パチンコ店の明かりが一晩中見える普通の住宅地です。
山ではありませんが、街のはずれのため、自宅から500mほど離れると、田畑や森林(樹齢1000年近いケヤキが生えていたりする緑化地域)が広がっています。
古墳のような丘や史跡も数多くあります。
昭和天皇がそろそろ崩御されそうな冬のある日のことです。
中国の史記の天宮図に「天子が崩御される時またたく」という星があったなあ、と思いつきました。
滅多にない機会なので、その星を観察して本当なのか確かめたくなりました。
家族に内緒で外に出られる年齢でもなかったので、みんなが寝た24時頃にこっそり起きて、庭で空を見ることにしました。
さすがに夜中になると近所中が寝静まり、街灯とパチンコ店の明かりだけ。
国道を通る車の音が聞こえるだけで誰も邪魔するものはありません。
そして、天体観測を始めてから3日目のことです。
夜空を見ていると、ふと視界に黒い何かが入ってきました。
大きくてフワフワしているようなので、「ゴミ袋かな?(当時のゴミ袋は黒かった)」と、そちらに目をやると、それは風に舞っている動きではありませんでした。
はるか上空からスーッと垂直に下がってきているようにしか見えません。
上から糸で釣られているように、音もなくスーッと下りてきているんです。
見ているうちに、ゴミ袋かと思っていたソレが、とても大きな翼を持つものだとわかってきました。
しかも人が腕を真横に広げて、直立した形。
とにかく全体が漆黒すぎるほどに漆黒。
国道沿いのパチンコ店が明かるかったからこそ、黒さが際立ったのでしょう。
もっと暗いところだったら視界に入ることもなく、気づけなかったと思います。
2階建ての隣家の屋根のあたりに降りてきた時点で、翼幅が3m以上はありそうな巨大さ。
近づくにつれ、驚きが大きくなってきたものの、なにせ自宅の庭。
パニックになることもなく、落ち着いてボーッと見てしまいました。
恐怖心もほとんどないまま。
「まさか人間が飛ぶわけないし・・。そうそう、きっと大イヌワシ?大きい鳥だよね?」
そう思いもっとよく見ようとしたとき、先日読んだ水木しげるの世界妖怪図鑑にあった『ガルーダ』というインドの妖鳥がなぜか頭に浮かびました。
確か、夜にうろうろしてる人間を連れ去る大きな鳥の妖怪、と書いてあったような・・・。
顔がはっきりと見えそうな位置にまで下りてきたソレに初めて恐怖心を覚え、家の中にダッシュで逃げられたのは、水木先生のおかげです。
妖怪って本当にいますよ!