僕がまた中学三年の時の話。
兵庫県のM神社(地元では創立者の名をとってNさんと呼ばれている)で、仲のいい友達6人で肝試しをすることになり、3:3に別れて中に入る事にしました。
普通は一人ずつ入るのでしょうが、6人はどうしようもないチキン。
僕を含む3人が外に残り、待機兼見張りを兼ね、残り3人が先発隊として中に入って行きました。
当時はまだ携帯はそこまで普及しておらず、代わりにPHSが流行っていました。
この6人の中で持ってるのは僕と先発隊のメンバーの一人のみ。
何かあったら連絡を取り合うという事に決まり、肝試しは始まりました。
五分ほどして早速着信。
電話口からは3人の楽しそうな声。
怖いので無理矢理明るく振る舞っているのだろう妙にテンションが高い。
状況報告やら夜の神社はやっぱり感じが違う等、どうでもいい会話が続きました。
しかし10分程話ていた時、電話口から奇妙な一言、「おっ、隠し通路発見。」
僕は子供の頃からこの神社が遊び場のようなものだったので今彼等が何処にいるのか手に取るように判るのですが「そんな所に通路なんかなかったはず・・・」と思っていました。
その後も状況報告が続きましたが彼等が今何処にいるのか全く分からなくなりました。
覚えているのは「狛犬が三匹いる」や「砂利敷きの道が終わり土の道に変わった」など意味不明なもの。
そうこうしてるうちに電池がなくなりかけたみたいで一旦切ることになりました。
その後、何故か電話はかかってこず待てど暮らせど三人は出てきません。
一時間経っても出て来ないのでさすがに焦りを感じた待機部隊は中の三人を探しに行こうか考えましたが、この三人もチキン。
悩んだ挙句、「きっと神主さんに見つかって怒られてるんだ」と無理矢理話をまとめ、中の三人を見捨てて逃げるように帰りました。
次の日、三人は無事に帰ってきただろうか?
中で一体何があったのか問いつめようと三人に近寄ると何故か三人共怒っている。
怒るのはこっちのほうで怒られる覚えはない。
訳が判らずとりあえず三人の事情を聞いてみた。
「俺達は中に入って20分もしないうちに外に出てきた」
「外に出たがお前ら(待機部隊)は何処にもいない」
「お前(僕のこと)に何度も電話したがずっと通話中だった」
「俺らが怖い思いをしてる中、一体お前ら何処で何をしてたんだ!」とこうである。
向こうは嘘をつくはずはないし、ついてるようにも見えない。
第一それに加えて本気で怒っている。
こっちの事情を話すと向こうは当然全く信じていない。
しかし嘘をついていないのはこちらも同じ。
やっとの事で信じてもらえた。
しかし全く判らないのはあの電話。
お互い嘘をついていないのなら、あの電話の主は誰だったのか。
一体何の目的があったのか。
ちなみにその神社は変わった造りをしていて、人が自由に歩けるのは神社の総面積のたった五割弱であり、その他は林とも森とも言い難い広大な空間が広がっている。
その森に何があるのかは神社の人間しかわからず、森の周囲は頑丈な塀が囲ってあるのだ。
僕が思うのは彼等はそこに行ってしまったのかもしれない。
可能性としてはそれしか考えられない。
しかしそれだと三人の話と全く食い違う。
また後日にその隠し通路とやらを6人で探したがそんなものはやはり見つからない。
全く訳が判らない。
話と関係ないかもしれないが、後日おばあちゃんに聞いた話では、『同じ肝試しでもお墓と神社では全く違う』と。
つまり、夜のお墓というのは幽霊が落ち着き、休まる場所であってよっぽど不謹慎な事でもしない限り、何も起こらないのだそうだが、「夜の神社だけはやめときなさい。神社はお墓と違って神様が集まる所なんだよ」と、そういう話である。
6人は神社の神様の怒りを買ってしまったのかもしれない。
現在、この6人はまだ何の祟りや不幸な事は何も起こっていない。
内、一人は東京に行って最近は連絡をとっていないが、僕を含む残り5人は今でも地元に住んでいる。
しかし神社での出来事は未だに謎なままである。
最近ではこの話は仲間内ではタブーになりつつある。
7年前、中学三年の時に起こった怖いというより不思議な気持ち悪い話でした。