友人(Aとします)の話です。
Aには愛用の自転車がありました。
それを飛ばして学校へと来ていましたが、ある日派手に転倒してぶっ壊れたそうです。
それからと言うもの、しばらくAは早起きして、歩きで登校していました。
それからまた、幾日か経ったある日のことです。
自転車で登校してきたAと校門で鉢合わせになりました。
Aは新しい自転車に乗っていました。
私は「ついにあの自転車捨てたのかw」と言い、茶化しました。
しかしAはちょっと嫌そうな顔で「捨てたのは捨てたけど、お前が思ってるような理由じゃない」と言い、気になった私は、詳しく話を聞きました。
Aは、自転車が壊れてしまってから数日後に、自分のそれが修理されている事に気付いたそうです。(なんと彼は、壊れた自転車を家まで持って帰っていた)
それはかなり荒っぽい修理で、『機械には弱いけど、頑張って直したよ』というような仕上がりだったらしく、辺りには部品のような物も落ちていました。
無論、Aの知る人物で修理をした者はいません。
では一体誰が・・・?
A曰くその時、「もう、かなり嫌な感じがした」そうです。
それは、夜、自分の自転車置き場から妙な音が聞こえてきて、Aは彼の父親に説明し、2人で恐る恐る見に行ったそうです。
そこに居たのは、手が血だらけになった中年の女性。
女性は、こちらに気付く様子も無く、Aの自転車を一生懸命直しています。
手の怪我は、慣れない工具を扱ったためだろう・・・とAは推測していました。
とにかく訳が分からず、「はあ・・・?」と思った2人が近付こうとすると、女性はそれに気付いたようで、「えええええええエーーーーーーっ!?」と、ものすごい驚いたような声を上げ、工具をほっぽり出して、小走りで走っていったそうです。
残されたのは、血が所々に付着した自分の自転車・・・不気味すぎて追いかける気にもならなかったそうです。
その後、Aの父親が調べた所によると、Aの自宅から少し離れた所に、小さな自転車修理屋を経営している夫婦が居たそうです。
夫が亡くなってからは店を閉めたそうですが、その後の妻の行方がわからない。
実家に帰ったのだろうか、いずれにせよ、その2人はとても仲が良かったそうです。
もしかしたら彼女ではないか・・・という事でした。
新しい自転車に買い換えてからは、何も起きなくなったそうで、私は安心しました。
「だから捨てたんだよ。俺の気持ちも分かるだろ?」とAは言いました。
私は、迷い無く頷きました。
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