薬の飲み方には気を付けよう

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

数年前、大学時代の話。
俺はエンスージアストの先輩(Aとする)と仲が良かった。
彼はいわゆる走り屋の車が大好きだった。

大学に入って、高校時代からバイトして貯めた金で青の日産シルビアを買った。
古い車だが安い軽自動車と比べたら乗り心地は良くて、俺はその車に乗せてもらうのを楽しみにしてた。
学期末試験期間のある日、俺はA先輩の車に乗せてもらって大学へ行くことになり、彼の家の最寄駅で落ち合った。

3週間ぶりくらいに会ったA先輩は風邪をひいてるらしく、顔色が悪くて目にクマができ、声にも元気が無かった。
でも、大丈夫だと言うのでさっそく車を飛ばして大学まで行くことに。

運転し始めてしばらくすると、俺はA先輩の様子がおかしいことに気付いた。
常に眉間にしわ寄せて、歯を食いしばるような顔をしてて、時々小さい声で何かをつぶやいてる。

「うるさい」とか「静かにしてくれ」とか言ってるみたいだった。

話しかけても聞こえてないみたいで、ひたすら何かをつぶやいてた。
で、大きな交差点の信号待ちで停車した。

1、2分ぐらい経っただろうか、信号が青に変わった。
でもA先輩は発進しようとしない。
俺が「あの・・・青になりましたよ。」と言った瞬間、A先輩が「うるせえっつてんだろ!!邪魔すんな!!」と叫んだ。

驚く俺を尻目に先輩がすごい形相で「あああああ!!」と叫び、アクセルを踏み込んだ。
車は急発進し、道の先、左側のガードレールに突っ込もうとし、半パニックの俺がとっさに助手席からハンドルを右にきり、ガードレールを回避した。

俺が「なにやってんすか!!」と叫ぶと、A先輩は息を切らしながら「うあああごめん!!」みたいな言葉を叫び、ブレーキをかけた。

いったん道脇に停車するとA先輩は段々と落ち着いてきて、普通に運転できるようになり、やがて大学へ到着した。

俺は試験会場へ行く前にA先輩に「大丈夫ですか?」と声をかけた。

すると、A先輩は「もう大丈夫だわ。マジごめん。ほんとに。」と言い、別れた。

試験が終わると再び先輩の車に乗り、俺の家の近くまで送ってもらったが、その時はもう具合は悪そうではなく、いつものよく喋る先輩に戻ってた。

俺はためらいながらも行きしなに起きた事を告げ、何があったのかを尋ねた。
詳しく説明すると長くなるので、簡潔に書くとこうだ。

・最近、彼女が自分と同じサークルの友達と浮気し、色んな胸糞悪い画像がLINEで回ってきて、かつ友達は自分より良い企業に内定が決まった。
嫌味を言われることもあったそうで完全にうつ状態になっていた。(元々うつっぽい所はあって通院歴があるらしい)

・毎晩の寝不足+眠気を醒ますドリンク(?)の飲み過ぎ+精神安定剤的なものをいくつか飲んでいた。

・そんな生活になってから、時々ものすごい悪寒と共に変な声が聞こえるようになった。
全部自分への悪口だった。

・その声は色んな知り合いの声で「女を寝取られた負け犬」とか「今頃ヤリまくってるだろうね」「車なんかシケた趣味やってるからだ」・・・などと言っていたらしい。

・それからますます寝不足がひどくなり薬の量が増えた。
そんな時に風邪をひいて、風邪薬も飲むようになった。

・酒は一滴も飲んでない。

それで、俺と大学へ行ってる途中に今までにない悪寒がして、視界がスローになって、変な声以外が聞こえなくなった。

どんどんその声のボリュームがましてきて、いい加減我慢できなくなって「うるせえんだよ!!」などと叫んでたら、突然耳元で俺の叫ぶ声が聞こえて、視界がスーッと元に戻り声が聞こえなくなったらしい。

あの時、A先輩に何があったのかは詳しくはわからないけど、とりあえず薬の飲み方には気を付けようと思った。

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