お前またアレの足折ったの?

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

学生時代、喫茶店でバイトしてた。
まだ若い店長さん(30歳位?)だったけど、優しいし仕事は楽だしお給料も悪くない。
良いバイト見つかったな~なんて思いながら半年位働いてた。

お店には店長の友人が時々遊びに来た。(以下Aさんと呼ぶね)
店長と同い年で、礼儀正しくて優しくて寡黙で、全盛期の堂本光一をちょっと切ない雰囲気にした感じの人。
営業時間終わりギリギリに来て、店閉めた後店長と遊んでたみたい。

Aさんはいつも犬を連れて店に来てた。
白い小型犬で、手提げゲージに入れられてたから顔しか見えなかったけどめっちゃ可愛い犬だった。
毛並も綺麗で、大切に飼われてるんだな~なんて思ってたのね。

で、ある日も閉店間際にAさんが遊びにきた。
お客さんもいない事だし、その日はもう店を閉める事にし、私は先に上がったのね。
でも帰り道で店に忘れ物をした事に気が付いた。

喫茶店に戻るともう店内は明りが消えていて、奥だけ電気が付いていた。
薄暗い店に入ると、白い犬が放されてて尻尾を振りながら近づいてくる。
でも歩き方が変で、よく見るとすべての足が変な方向に折れ曲がっている。
障害のある犬なのかな・・・なんて思って抱き上げるとお尻の辺りの感触がオカシイ。
何かこう、皮膚というか肉が直接触れる感じ。

よく見るとお尻の辺り・・・というか後ろ足付け根内側からお尻にかけて範囲はそんな広くないんだけど、毛が無くてボコボコしててケロイド状になってて・・・。
そのボコボコしている一面が所々赤く腫れていて、点々と血が出て膿んでる箇所もある。
何かを押し付けたような火傷の痕だとすぐ分かった。
私も小さい頃火傷をしてその跡が残ってるから。

随分昔からの、そして最近の火傷の跡・・・。
メスの犬だったんだけど、お尻周りというか性器周辺が特に執拗に変形している。

それに気が付いた時、ものすごい鳥肌がたっていた。
でも何ていうのかな、まだ忘れ物の事が頭から抜けなくて無意識に奥の控室に近づいたら、店長とAさんの声が聞こえてきた。

「お前またアレの足折ったの?凝りねぇな~。でもさすがにタバコの火は可哀想だから控えろよな~もう4匹目だろ」

2人は私が店に戻ったのに気が付いて無くて、笑い声が響いていた。
何かこうすごく恐くなって、ガクガク震えながらこっそり帰った。

その後、変わらず店長もAさんも優しかったけど、何だかんだ言って私はバイトをすぐ辞めた。
辞める前にAさんに食事に誘われたのだけれど、課題が忙しいと断った。

凄まじいDVをする男の人の中には、雰囲気や態度を上手く隠して分からない人が入るとは聞いたけど、本当に分からないものだと初めて感じた。

今でもAさんの普段の態度や物腰と、あの白いメスの犬の破壊されまくった体が結びつかないのね。
Aさんは独身だったけど結婚したら奥さんのお尻に敷かれそうで、むしろAさんが奥さんからDV受けそうだね~なんて冗談よく皆が言ってたから。

本当の虐待する人は、相手が逃げる事が出来ない状態になった時に本性を出すらしい。
だから私は将来結婚する時に、何かあった時に絶対に逃げられない状態にならないように決めたのね。
だからコッソリとちょっとだけまとまったお金を別場所で保管してて、身一つで飛び出してもなんとかなるようにしてる。
その事は家族にも教えてない。

まぁなんだかんだで、私もどうにか結婚できまして。
幸い夫君は本当に優しい人で私はDVとは縁の無い人生を送れそうです。
でも万が一の事を思ってコッソリ貯金はへそくりとしてそのまま維持しておきます。

もしDVを受けてしまったら、すぐにその場所を出てシェルターや役所に頼ってください。
ちょっと叩かれただけだし、これぐらい平気・・・・と我慢していると、どんどんDVがひどく容赦ない暴力になり泥沼になっていきます。
最初の時点で、毅然と距離を撮るのが被害を最小限に出来ますので・・・。

Aさんはすごいイケメンで優しくて寡黙で本当素敵な人だなって思っていたので、犬の事さえ知らなかったら、もしかしたら付き合ってしまってたかもしれない・・・と考えると今でも怖いですね。

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