火をつけてやった

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

昔住んでた家の近所であった話。

うちの近所で火事があった。
一人暮らしのおばあさんが住む一軒家が全焼した。
まわりの家はススをかぶっただけで無事だった。
住んでいたおばあさんも、その日の朝早くから旅行に出かけていて無事だったが、問題となったのは火事の原因。

おばあさんは10数年前に夫を亡くしていて、消防署はその旦那さんの入っている仏壇の線香の消し忘れが火の元だと断定した。
おばあさんはボケてはいなかったが高齢だったので、「家を出る前に、ちゃんと線香とろうそくは消した・・・と思う」と曖昧な返事だったせいも、ある。

火災保険には入っていて、おばあさんの息子夫婦も近所に住んでおり家を建て直す間、おばあさんは息子夫婦の家に同居した。

しかし火事のことがよっぽどショックだったのか、旅行好きだったのにまったく外出しなくなり、少しボケの症状が出はじめた。

火事に遭うまでは社交的で、「一人暮らしだから寂しいのよ」といって友達を招いてお茶を飲んでいたりしたのに、新しい家が建っても誰も招こうとせず引きこもり。
息子夫婦が様子を見ていたが、どんどんボケが進行し1年もたたないうちに老人ホームへ。

それから数年後。
市内で、留守宅の家に侵入しては盗みを働くコソ泥が捕まった。
何年もあちこちの家で盗みをはたらいていて、余罪がたくさんあったらしい。

そして「数年前、○○町の家に盗みに入ったが金目のものが何もなかったので火をつけてやった」と自供した。

その○○町の家というのは、件のおばあさんの家。
つまり火事の原因はおばあさんの失火ではなかったのだ・・・。

しかしそれがわかったところで、もうおばあさんはボケてしまい、息子の顔もわからず、家が燃えたという記憶すらあいまい。
コソ泥もホームレスで、賠償金など払えるような資産もない。

火事が起きたとき、もっと消防署がよく調べていれば放火だとわかったんだろうけど・・・。

おばあさんの年齢や状況からしょうがなかったんだろうといわれていたけど、今思い出しても後味が悪い。

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