楳図かずおの短編、『森の唄』。
田舎の一軒家に引っ越してきた夫婦。
海と森に挟まれた風光明媚な土地で、夫は妻へのプレゼントだと言う。
田舎暮らしはそれなりに快適だったが、次第にひとりの時間を持て余すようになった妻は、ひょんなことから森番の青年と関係を持ってしまう。
神経質な夫と違って逞しく野性的な青年に夢中になる妻。
嫉妬深い夫は自分を田舎に閉じ込めたつもりだろうが、うまく出し抜いてやったとさえ考える。
ある日2人がいつものように森で盛っていると山火事が発生、逃げる途中青年が足を負傷して動けなくなってしまう。
助けを呼ぶため妻だけが森を脱出するが、偶然早めに帰宅していた夫と出くわしてしまう。
夫に助けを求めれば必然的に青年と森に2人でいたことがばれてしまう。
だが、このまま黙っていれば青年は死ぬかわり不倫は露見しない・・・。
迷ったすえ妻は「山火事を目撃した」とだけ伝えて青年を見殺しにしてしまった。
結局山火事の原因はわからず終いで、青年が救出された知らせもなかった。
ところが数日後、妻は死んだはずの青年と遭遇する。
足を傷めた様子など微塵もない青年を見て、山火事は青年が自分を試すために仕組んだのではないかと考える。
さらに焼けた森は全て夫の所有だったことが判明。
なぜ夫はそのことを黙っていたのか。
もしや山火事は夫のしわざだったのか・・・いや、そもそも青年との出会いからして夫が仕組んでいたのでは・・・。
疑心暗鬼に陥る妻だが、真相はわからない。
ただ、彼女が二度と夫を裏切れないことだけは確かだった。