死ねばいいのに

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

それは、些細なことから始まった。
深夜、コンビニで買い物を済ませ、自宅まで帰る途中に何かが落ちているのを見つけた。
よく見るとうつ伏せのお人形。
いつからそこにあるのかは分からないけど、服は汚れているが、顔は綺麗だし壊れている様子もない。

ご近所の子の落とし物かと思って、すぐ側にあった電柱にもたれかかるように座らせてあげた。

それから帰宅時に同じ人形をたびたび見かける。
それは、本当にまちまちの場所で、必ずどこかにもたれかかりこちらを見てるかのように座っている。
気持ち悪いのは事実だけど、例えば怪談に良くあるような「少しずつ家に近付いてる」なんてことも無いし、なるべく見ないように過ごしてきた。

「そういえば今日は見かけなかったな」と思って帰宅した日、遂に事態は急転した。
ドアを開けると、足元にあの人形がうつ伏せに倒れている。
正直、心臓が止まるかと思うくらい驚いたけれど、家の中にそのままにする訳にもいかず、玄関から外に出し明日の朝からどこかに持って行こうと座らせた。

翌朝、その人形はそのままの姿勢だったけれど、その横には「好きです」と書かれたメモが置いてある。

子供の字のようにも見えるし、大人が雑に書いた文字のようにも見える。
とにかく気持ち悪くて、近所のゴミステーション横の電柱にもたれかけて出勤した。

それからは、毎晩帰宅すると玄関足元に人形が転がっている。そして、日に日に汚れが目立ち、顔が欠け、指が欠け、無残な姿になっていった。

完全にこうなるとホラー映画の世界だし、精神衛生上よろしくない。
休みの日にでもお寺に持ち込んでみるかと思いながら、日課のようになったゴミステーションの横の電柱に座らせた後、歩き出してすぐに車の急ブレーキが聞こえた。

猫がその人形をくわえて道路を横断しようとして轢かれたらしい。
朝から嫌なもの見た・・・そう思いながらも出勤し深夜に帰宅すると、ドアを開けた足元には血の付いたあの人形の頭部。

それからは毎日、人形のパーツが一つずつ玄関に転がっている。
全部のパーツがそろったと思われる頃、憂鬱な足取りで帰宅すると、玄関の足元には「死ねばいいのに」と書かれたメモが落ちていた。

・・・という話を友人が話してた。
彼は今も元気です。

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