ある女の子がフリマで大きなクマのぬいぐるみを目にし、彼女の背丈ほどもあるそのクマを、少女は非常に気に入った。
少女は母にそのぬいぐるみを買ってもらった。
少女はそれを枕元に置き、いつも一緒に寝た。
ある日少女の家に電話が入った。
誰かと思えば、彼女にぬいぐるみを売った人物だという。
「あのぉ。やっぱりあのぬいぐるみ、返していただけないでしょうか?」
売ってはみたものの、やはり名残惜しくなってきたのだろう。
電話に出た少女の母は丁重にお断りした。
娘も気に入っているし、「一度売ったものを返してもらおうなどあまりに非常識ではないですか、」と。
電話の主は何度も何度も「返してください。お願いです。」と繰り返したが、ついに諦めたのか、「ただし、何があっても私には責任はありません。」とだけ告げた。
少女の母は「もちろんです」と、電話を切った。
それから数日後のある朝、いつまでも部屋から降りてこない少女を不思議に思い、母は少女の部屋に向かった。
少女の部屋からは、何かが飛び回るようなうるさい羽音が聞こえていた。
「??????」
母がドアを回すと、扉は苦もなく開らき、中を見た瞬間、少女の母は金切り声で叫んだ!
何と部屋中を黒いゴキブリが埋め尽くし、少女の身体中にもたかっていたのだ!
少女は鼻も口も塞がれ息をすることも出来ず、既にベッドで失神。
隅の方には、背中の皮をはがれたクマのぬいぐるみが転がっていた。
その後の警察の調べによると、クマの背中には目立たぬ縫い目があったという。
縫い目をとくと、中はほとんど綿など詰め込まれておらず、その代わり孵化寸前のゴキブリの卵がぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。
しかし何故ゴキブリの卵が詰められていたのか、ぬいぐるみの持ち主はこの事を知っていて売ったのか、それともあんな電話をかけてくるということは最近まで何も知らなかったのか。
知ったとしたら何故その事実に気づいたのか。
全ては不明のままである。