別れない夫

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

浮気が発覚しても別れないと宣言されたこと。

ある日、義両親に呼び出され、興信所の調査結果を突きつけられた。
そこには、メールや写真、果ては子供のDNA検査など、いろんな種類の証拠が克明に記されていた。

義両親:「アナタは浮気をしてるから別れなさい」

顔が青くなる私を前に、夫は「知ってた」と一言。

晴天の霹靂だった。
だって私にとって夫は疑うことを知らない、人がいいだけの男って印象だったから。
めんどくさくて家事や育児を押し付けても、「疲れてるんなら俺がやるから休んでいて」ていっちゃうタイプ。
途中から疲れてそうな演技をするのもだるくて、日中に出かけるのにもだんだん言い訳しなくなった。
それでもへらへら笑ってるだけだったし。

姑が知ってるなら話が早いと、事務的に今後の話を進めようとすると、夫がそれを遮って「絶対に別れない」と。

曰く、
・子供のことも浮気のことも結婚前から知ってた。
・私が何をしても好きだから別れる気はない。
・文句言うなら絶縁する。

義両親たちに正気に返れだの、騙されてるだの色々いわれたけど、夫は二人のことだからほっといてほしいと、私の手を引いて家から出た。
なんかテンションが変ですごく楽しそうだった。
「何で笑ってるの?」と聞くと、「楽しいから」と。

怖くなって「怒ってるよね?」と聞くと、「怒ってない」。
「別れなきゃだめ?」と聞くと、「だから、別れないって」。

何をすればいい?って聞いても何もしなくていいっていうし、私の好きなことをしてほしいから浮気ぐらい好きにしていいっていうもんだから、もしかして夫も同じことを?と疑ってみると、「俺はしない」ときっぱり。

じゃあどういうつもりなんだと詰め寄ると、夫はしぶしぶといった仕草でパソコンを出した。

そこには私の名前をパスワードにしたフォルダに、隠し撮りした私の写真がずらっと。
もちろんそれもぞっとしたんだけど、一番怖かったのは私が小学生の頃の写真もあったこと。

私の家にも同じものがあったから確信してるんだけど、学校行事の写真て学校でとって、後日希望者が枚数分のお金を払って買うじゃん?
確かに夫とは同じ小学校だったけど、学年が違うんだよ、向こうが4歳上。
写真自体古いものだったし、どうやって手に入れたのか考えるとものすごく怖い。

固まってる私に「ごめん引くよね」って夫はへらへら笑った。
好きなのは本当だと前置きした上で、「浮気しているのも、子供の親が俺じゃないのも知ってた。知ってたけど好きだから結婚した。好きだから、実は全部知ってるんだっていったらどんな顔をするんか知りたかった。この写真も別にストーカーってわけじゃないけど、見せ付けたらどんな風に反応するか考えるだけでわくわくした」だから今はすごく楽しいと。

なんかいろんなものがキャパを超えて、泣き出してしまったら、「笑ってるほうが好きだけど、泣いているのも好き」って追い討ちされて、もうなんかだめだって膝から崩れた。

しばらく泣いたり怒ったりして過ごしたけど、すごく楽しそうに夫が甲斐甲斐しく世話してくれるもんだから、なんかもう。

別れたいけど、私が悪いから誰にも相談できないし、別れようとしたら法的手段で滅多打ちにした後で夫が手を差し出してきそうだし、失踪したら草の根分けてでも探されそうで、なんかもう詰んだ。

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