無償の善意に賠償責任

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

20年以上前にサスペンス劇場か何かの再放送で見たドラマで、タイトルも出演者も不明なんですが、やたらと後味が悪いものがありました。

ある夫婦(A)が大掃除をしていて、自分の子供(小学生ぐらい)の面倒も見れない状態の時に、近所の夫婦(B)に「買い物に行くから、子供を預かってほしい」と言われる。

夫婦(A)は「自分の子供の面倒も見れない状態だから」と断るが、B夫婦は「少しの間だけ」と無理矢理子供を押し付けて出かけてしまう。
・・・しかし、B家の子供はA家の子供と遊んでいたが、水の事故かなんか(記憶あやふや)で死んでしまう。

B夫婦は、A夫婦に責任があるとして、裁判を起こす。
しかも、B夫婦は自分が無理矢理子供を預けたのに裁判では、A夫婦の方から『子供を預かる』と言ってきた、『心配ない、まかせて下さい』と言ったと証言する。

A夫婦は反論するが、マスコミはB夫婦の証言を全面的に信用し、A夫婦を「無責任」と非難する。
A家の妻は、近所の人からも白い目で見られるようになる。

その内、A家に無言電話がかかってくる。
はじめは「なんだろう?」程度に思っていた妻だが、それはたびたびかかってくる。
そして、それは次第に『無責任!』『人殺し!』と一方的に言って電話をきるイヤガラセになってゆく。

ストレスがたまっった妻はある時、イヤガラセの電話に対して「あなたは誰です!」と聞き返す。
すると、電話の相手は『正義の人だ』と答えた。

A家の妻は、夫と相談して電話番号を変更することにすると、A家には電話がかかってこなくなった。

落ち着く妻。

しかし、再びどこからかイヤガラセの電話がかかってくる。
頭をかかえる妻、電話のベルは鳴り続ける・・・。

20年以上前に見たものなのに、未だに頭のスミの方に嫌~な気持ちが残ってます。

この話は昭和58年に三重県で起こった隣人訴訟と似てる。

→隣人訴訟
A夫婦とB夫婦は隣人同士で、子供が同じ幼稚園に通っていたこともあり親しかった。
ある日、両夫婦の子供が家の前で遊んでいた時、A(奥さん)が買い物に出かけるために子供を連れて行こうとしたが子供が拒否。
B夫婦は家の掃除をしていたのだが親切心から、「子供をそのまま遊ばせて買い物に出かけたらどうですか?子供は大丈夫でしょう」という趣旨のことを言って声をかけた。
そこでA(奥さん)は「よろしくお願いします」というようなことを言って一人で買い物に。

その後、B夫婦が目を離した隙に子供たちは近くの池に行き、A夫婦の子供(3歳)が水遊びをしているうちに溺死。
子供の葬儀の後、A夫婦はB夫婦と話し合おうと家を訪れるが、B夫婦は頑なに会おうとしない。
A夫婦は意思疎通不十分なまま、B夫婦と池の管理責任のあった県などを訴えた

→判決
A夫婦:過失8割(子供の監督が極めて不十分)
B夫婦:過失2割(声をかけたのに子供から目を離すという落ち度)
で、結局B夫婦に526万円の損害賠償の支払いが命じられた。

判決後、新聞などのマスゴミが、『無償の善意に賠償責任』『好意で子供を預かっても責任』『隣人の好意に厳しい判決』という見出しで報じたこともあり、報道されたその日からA夫婦のところに匿名の電話や手紙が殺到。
その殆どが非難と嫌がらせで、『お前は死んだ子供をたねに強請る気か』とか、『欲張り』『人でなし』といった非難・罵倒が多かった。

A夫婦は、何も損害賠償をとる目的だけで訴えたわけではなく、紛争を公正かつ納得の行く形で解決したいと願って裁判を利用したにもかかわらず、心無い世間の反応にやる気をなくし、裁判を取り下げ。

間もなくB夫婦の方にも、『A夫婦が裁判を取り下げたのに控訴するつもりか!』と激励から非難の電話・手紙が来るようになったので、結局両夫婦とも裁判を取り下げる形で終わった。

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