おじいさんのお世話

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

おばあさん:「お父さん、おかゆができましたよ」

おじいさん:「ああ、母さん、すまんな。食えんのじゃ。」

おばあさん:「風邪でもひいた?もう歳なんだから体に気をつけないと・・・」

おじいさん:「すまんな母さん。母さんには長いこと苦労をかけたなあ。」

おばあさん:「いやですよお父さん。お互い様でしょ。元気になってくれないと、あたしが寝込んだ時に困りますよ」

おじいさん:「うん。そうなんじゃが・・・。おうそうそう、さっき娘を呼んでおいた。」

おばあさん:「あら、先週会ったばかりですのに。あんまり呼びつけてばかりでは迷惑ですよ。あの子達にも生活があるんですから」

おじいさん:「いいんじゃよ。今度ばかりは。」

おばあさん:「・・・?あら、誰か来たわ」

おばあさん:「・・・あらあら、いらっしゃい。今ちょうどあなたの話を。お父さんが風邪で寝込んで。え?臭い?さあ・・・わたしは別に・・・どうしたの?そんなにあわてて」

【説明】
何年か前に本当にあった話。
老夫婦が暮らしていて、おじいさんはコタツに入ったまま老衰で死んだんだけど、おばあさんが少しボケていてそれを理解できず、ずっとおじいさんの食事の世話をしていたという実話。
娘だったか近所の人が発見して通報したんだが、救急隊員が、おじいさんの遺体を担架に乗せて運ぼうとしたら、おばあさんが「おじいさんはちょっと具合が悪いだけなんだよ!連れていかないで!」と、泣きながら救急隊員にすがっていたそうだ。

ボケているとはいえ、夫婦愛の強さにみんな泣いた。

そのおじいさんはお酒が好きな人だったらしく、発見されるまで、夕食にはおばあさんが毎日、日本酒を一合お燗して出していたそうだ。
そうやって何十年も暮らしていたんだろうな。

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