実の両親の暴力で死にかけ

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

10年も前の話。

大学入ってすぐに、同じ講座を受けている中に気になる女の子が出来た。

ボブカットで、夏でも長袖。
下はズボンかロングスカート。
リングのピアスを、左右2個ずつしていて、ハキハキと喋る元気な子。
スレンダーで、身長も140cmないのに、全身からパワーが溢れていた。

構内で違反行為(違法ではない)が問題になったり、パーティークラッシュが起こると必ず名前の挙がる、少し破天荒な彼女。
なのに、ふとした拍子に、疲れた様な、自嘲する様な表情をすることがあり、相反する態度に、急速に引き寄せられた。

何度も誘った。
その都度断られた。

「これから皆と遊びに行こうと思うけれど」と言うと喜んで付いて来るのに、女の子とであろうと二人きりになろうとしない彼女。
誰にも心を許さず、懐かない、ネコのような存在。

彼女の事を知りたくて、僕の事を知ってもらいたくて、皆と居る時に色々な話をした。
そのうち、彼女も自分の事を話してくれるようになったが、全て大学に入ってからの事ばかり。
仲良くなれたかな?と思っても、偶然二人きりになると、怒ったような顔で逃げて行ってしまう。

「ああ、もしかすると本当は、すごくウブなのかな?」

なんて思うと可愛くて、余計に彼女が欲しくなっていった。

1年生も終わりになると、彼女は二人きりになっても逃げなくなった。
そして、2年の夏。
彼女に交際を申し込み、僕らは付き合い始めた。

付き合ってみると、彼女は日常の些細な事まで僕に相談をして来る。
と言うよりも、許可を求めてくる感じ。
普段学校で見せる自立した雰囲気と異なる一面を見られて、可愛らしく思っていた、ある日・・・。

バイトの眠ってしまった僕は、なぜか夜半に目が覚めた。
ぼんやりとした頭で周囲を伺うと、窓際で声がする。
暗闇の中、月明かりの中、鏡の前に座った彼女。
鏡に向かって、自分自身を見つめながら「あなたは要らない子じゃない。あなたは良い子。大丈夫、私は嫌われていない・・・・」とブツブツと囁いていた。

うつろな、抑揚の無い声に怯えて、眠った振りをし、翌日から彼女の過去を探った。

幼少時代、実の両親の暴力で死にかけ、親類の間を転々と暮らした、彼女の過去。

彼女を支えていけるのか・・・この恋が終わった時、彼女はどうなるのか?
恋愛に恐怖を感じた、初めてのお付き合いでした。

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