昔々、岩手県盛岡市のあるところに、非常に仲の悪い嫁姑があった。
ある日、その嫁姑がどちらも同時に妊娠するという珍事が起こった。
嫁はともかく姑までお元気なこって、とみんな噂したらしいが、姑はともかく嫁の妊娠が気に入らない。
そんなわけで、この姑はあろうことかあるお寺のお地蔵様に「嫁が流産しますように」と毎日お参りし始めた。
このお地蔵様というのが愚直なほどに物分りがよかったらしく、果たして嫁は臨月に流産してしまった。
姑は喜び勇んで身重の体をものともせず、そのお地蔵様にお礼参りにきた。
「お地蔵様のおかげであの憎らしい嫁が流産しました。ありがとうございます」と手を合わせていると、お地蔵様が突然、口を利いた。
お地蔵様:「なぁ姑よ。自分の嫁、孫が流産したというのがそれほどに嬉しいか?」
姑がその問いに「大変嬉しく思います」と返すと、お地蔵様は「そうか」と一言だけ返答した。
すると、にわかに姑はその場で産気づいてしまった。
姑が艱難辛苦の果てに生んだやや子は、なんとただの石の人形になっていたそうな。