女子高生の頃の話。
うちの家は結構田舎で、夕方になると住宅街だけど人通りもかなり減る。
あれはちょうど今くらいの時期だった。
冬で、18時前くらいだったけど辺りはもうだいぶ薄暗かった。
その頃私は足の甲を骨折していたので歩くのがかなり遅く、普段は徒歩10分の駅から家までの道を倍はかけて歩いて帰っていた。
帰り道に中学校があっていつもは人通りがまだあるんだがその日は部活をしてる生徒も下校途中の生徒もまったくいなかった。
その日の学校からの帰り道、中学校の前にさしかかったところで道路向かいの古い個人病院の前に15、6歳くらいの男が一人立っているのに気付いた。
学校には行ってなさそうな雰囲気で、誰かと待ち合わせてる風でもなく、健康そうで病院に用があるわけでもなさそう。
でも、なんとなくその場にいるのが不自然だった。
これは関わらない方がいい・・・と目を合わさないようにしていたのだが、気付いたら付けてきたらしく、その男は私の斜め後ろをぴったりと歩いていた。
「足、怪我してるん?」
やばいと思った私は男が話かけてきたのを無視して若干速足になっていた。
が、このまま家まで付けられるのももっと困る・・・。
どうにかまかねば、と思い内心かなり焦っていた。
その間にも男は話かけてくる。
100メートルほど歩いたところの三叉路でこれ以上付いて来られるとまずいと立ち止まり、「いい加減にしてくれ!」と頼んだ。
その瞬間、手首を強い力で握られた。
振りほどこうにも振りほどけない。
初めて正面に立ったけど身長差は15~20センチはある。
これは勝てない・・・とちょっと泣きそうになった。
男:「ちょっとついてきてくれ、すぐにすむから」
私:「帰るから離してほしい」
この押し問答がしばらく続いたところで、急に男はそれまでの下手だった態度を急変。
「うるさい」と睨みつけてきた。
手首もギリギリと締め付けられる。
かなり絶望と恐怖が襲っていた。
周りには誰もいないし、怪我のため走って逃げることもできない。
どうすれば・・・と本気で泣きそうになってたところ、たまたま近くを女子高生二人組が通った。
男は気と視線を取られたのか、手を緩められ脱出成功。
そそくさと逃げたところで男は興味を向こうに持っていかれたようだった。
ちらと振り向くとその男は女子高生に向かって歩いて行っていた。
その子たちは二人組だたし自転車だったのでたぶんすぐに逃げれたと思うけど・・・。
もしかしてあの後こっちに引き返して家まで付けられてるんじゃないか思うと、それ以降振り向くことも怖くて無我夢中で逃げ帰った。
後日、駅で警察に不審者にあったことはないか?と聞かれ、その件を話すと、どうやらその男のことらしく、他にも被害があったみたいだった。
数日後、隣の市にある私の通う高校でもその不審者についての注意があった。
事件になったとか逮捕されたとかそういう話は聞いてないので、その男がどうなったのか不明。
何かされたわけではないけど、これが一番怖かった体験。
大したことじゃないしよくある話だけど、自分の身に起こると地味に怖いよ。