オレンジ色の月

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

「オレンジ色の月だから」

夜中に一人で近所の駄菓子屋さんにアイスを買いに行った。
夜7時に一人で人気のない住宅地の道をとぼとぼ歩くのは危険だって小学校で先生から言われたけど、何かあったら大声だせばいいよって親が言うもんだから50円握り締めて冒険した。

キーコキーコ向こうから町内会のおっちゃんが自転車できた。
すると、いきなり大声で怒られた。

おっちゃん:「子供がこんな時間にうろうろしたらいかんばい」
俺:「アイス喰いたか」

おっちゃん:「そげなもん明日でよかろうもん」
俺:「今喰いたか」

おっちゃん:「んだ、じゃ一緒にいくばい」

空には巨大なオレンジ色の月が登っていた。

おっちゃん:「・・・ほーら見てみい。お月さんが血の気で赤うなっちょる」
俺:「えっ、何」

おっちゃん:「どっかで血の気がするんや。喧嘩かもしかしたら殺人事件かもしれん。恐ろしか。早よ買って帰ろう」

その夜、夜中にワーワーと外で声がして、父が町内の人に呼び出されて、母は「気にせんで寝なさい」ときつい声で怒って・・・。

ずっと後で痴話喧嘩だったらしいと聞いたけど、女が男に刃物で刺し殺されたらしい。

なんで、あの時、遠回りして駄菓子屋にいったの?
おっちゃん

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