大学生の頃の話・・・と言っても5年くらい前。
宅飲みに呼んでも酒は一切飲まず、夜の3時になったらバイクで家に帰る後輩がいた。
シラフでも面白いやつだったからよく一緒に夜中まで騒いでいたのだが、家に着いたら必ずLINEで連絡をくれた。
そいつから帰宅の連絡が入ればもうお開き、という流れが定着していた。
ある土曜日のこと。
普段より飲み過ぎた俺はそいつが帰るより前に寝てしまったのだが、「警察に行くぞ!」と朝の7時に叩き起こされた。
どうやら後輩から連絡が入っていない上に、一緒に飲んでいたやつの一人(こいつをAとする)が、後輩の飲み物にこっそり酒を混ぜていたことを酔いに任せて白状したらしい。
一瞬で酔いが醒め、みんなで近所の警察署に駆け込んだ。
駐車場にいた警察官に事情を話すと、すぐ中に入れられた。
そして、聴取が始まる際に、それらしきバイク事故の届が既に出ていることを聞かされた。
1人ずつ別々に聴取されたが、自分はほとんど寝ていただけで、普段はどうだったかを伝えることしかできなかった。
帰ったら必ず連絡が入ることや、自分で持ってきた飲み物しか飲まなかったこと、
後輩は下戸を自称していて酒を飲んでいるのは全く見たことがない・・・などなど。
聴取は1時間もせずに終わったが、結局昼過ぎまで警察署に拘束された。
そして最後に後輩の死を聞かされ、すぐに大学経由で葬儀の連絡が入った。
当時の状況だが、俺が寝てしまったあと、残ったのはAと後輩とあと2人で4人。
後輩と2人が台所で探し物をしている間に、Aが後輩の飲み物に酒を混ぜたそうだ。
後輩は帰り際も至って普通で、日焼けしていたから顔が酒で赤くなっていたかは判断がつかなかったと。
後日、警察と2人が俺の家に来て、俺はどこで寝ていたかや、2人は台所で何をしていたか、なぜAと後輩は台所に来なかったのかなど詳しく聞かれた。
その後も大学に尋問を受けたり、証拠として警察から道路カメラの映像をを見せられたりした。
俺も含めて4人全員書類送検され、検察にも呼ばれたが、起訴されたのはAだけだった。
Aとはあの日以降音信不通になり、次に見たのは裁判所。
自分達3人は証人として出廷したが、1審で実刑判決が下され、そのまま決定した。
Aから目を離した自分達への罪悪感や、後輩をもっと気遣えばよかったという後悔ばかりが残った。
何より、普段から誠実で人当たりの良かった後輩に飲酒運転という汚名を着せて死なせたAに対する憎悪は消えず、かえって膨らむばかりだ。
こんなところに書いたって、一生背負い続けるものが消えることはない。
道端に置かれている花束ひとつにも、こうした背景がある。