セミと奇行おとこ

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

昨日の話なんだけどすげー怖かったので書く。

昼間、ちょっと用があって市の図書館に行った。田舎だけど図書館はけっこう人が多い。
俺は棚から目当ての本を選んでテーブルで読んでたんだが、そこに一匹のセミが紛れ込んできた。

やばいな・・・と思って見てたんだが、案の定セミは鳴き始めた。

物凄くうるさい。

司書?の人が笑いながらセミを逃がそうと追いかけたんだが、セミはかなり高い位置に移ってしまい捕まえるのも難しくなった。

結局外に出すこともできなかったが、幸いセミは鳴き止み皆気にしていない様子だった。
しかし、しばらくするとまたセミが鳴き始めた。
で、最初は我慢していても誰かがキレ出すんじゃないかと心配で、俺は利用者の顔を伺っていた。

その時、明らかにおかしい人が一人いることに気付いた。
テーブルから少し離れたところに立っている眼鏡の男性だったんだが、本も持たずに口をポカンと開けていた。
市民図書館だし変な人がいるのはまあよくあることなんだけど、その人はもっと異質だった。

セミの鳴き声が止むとその人は口を閉じ、また鳴き始めるとその人も口を開けるのだ。
その人はセミの鳴き声に合わせて甲高い声で叫んでいた。

俺以外の人はその男性の奇行に気付いていないらしかったが、俺はそんな異常者と同じ空間にいるのがたまらなく怖かった。

セミが捕まえられるまでその男性は叫ぶことをやめなかったが、セミが捕まえられるとその男性は他の利用者と同じように本を選び、読み始めた。

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