死臭が漂う人間

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

編集プロダクションで契約社員として働いていた3年ほど前のこと。

よく仕事をしてもらってるベテランライターさんから、40代半ばの新人ライターを紹介されたことがある。

この業界、早い人は大学在学中からライターやってるのに、40代で新人は珍しい。
180センチ100キロ近い巨漢でスキンヘッドの強面。
だが、専門分野はオタク系という変わったライター。

この人・・・Tさんが、大きな声でよく喋る。

当時、その編プロでは、某社のムックシリーズやコンビニ500円本をやっていたので、使えるライターならぜひ使いたいところ。
面接というか面通しを、デスクとマネージャーでやってた。

その最中に、進行中のスピリチュアル本の資料を、Kさんが持ってきてくれた。
Kさんは資料を担当に渡すと、仕事中の私に話しかけてきた。

Kさん:「なに、この臭い?死体の臭いがする」

以前、私はKさん絡みのスピリチュアル本をやっていたから気楽に話せるので、「え?そんな臭いしますか?」と返した。

Kさん:「自殺した死霊の臭いだよ。とんでもない人が出入りしてるんじゃないの?」

Kさんは顔をしかめながら、部屋を見回し、「自殺した女の霊よ。祟ってるというか、呪ってるというか。こんなの背負ってる人と仕事したら、会社ごと潰れかねないよ」と。
そして、Kさんは、デスクが面通し中の小会議室(パーテーションで区切られていて中は見えない)を指差した。

Kさん:「あの人、ダメよ。経歴も何もかも嘘っぱち。調子のいいこと言ってるけど、全部ホラだから。この女の人の霊は、死んだ奥さんよ。浮気に苦しんだ末の自殺。絶対に関わらない方がいい」

そう言い終えるとKさんは「ああ、やだやだ」と呟きながら、さっさと帰ってしまった。

その後30分ほどして巨漢のTさんも部屋から帰った。
マネージャーは、本当に使えるなら使ってみてもいいんじゃないか?という判断だったが、編集長は渋っていた。

編集長:「なんか、胡散臭いんだよ。虚勢を張ってるというか、なにかを隠したり、誤魔化そうとしてる人間の話し方なんだよな」

私は「あの、さっきKさんがいらっしゃって資料を持ってきてくれたんですけど、その時、ちょっと気になることを・・・・・・」と話した。

編集長は「うちが懇意にしてるオタク系ライターにちょっと聞いてみる」、といって一週間後。

編集長:「すごいな、Kさん。だいたい当たってた。Tの奥さん、4年ぐらい前に自殺してるんだよ。あと、Tの評判も最悪だったな。ライターといっても、実績殆ど無いし、ネットで駄文を書き散らしてるだけだった。今回というか、うちでは永遠に見送りさせてもらうことにしたよ」

その数ヶ月後、年末の忘年会で、Kさんと話をした。

Kさん:「あれはね、ひどかった。死んだほうがマシな状態だったのよ。だけど、死なせてもらえない。奥さんの霊が死なせないのね。『生きて苦しめ』、って。元々は自分の蒔いた種だけど、人間不信の塊みたいになってる。自分が、他人を利用することしか考えてないから、他人を信じられない。助けてくれようとした人も何人もいたんだけど、本人の疑心暗鬼で人間関係を駄目にする。それから、自殺した奥さんの霊が、絶対に成功させないようにしてる。あの人を引っ張り上げようとした人は、からだ悪くするよ。だから、関わっちゃダメ。あの人と奥さんの因縁だから。触るとろくな目に遭わない。他人は近づかないのが一番」

ちなみに、Tさんを編プロに紹介したライターさんは、その後、糖尿病を急速に悪化させ、今は目がほとんど見えなくなったとか。

そして、最近、Tさんの名をネットで見たのですが、Tさんを起用した某有名人は大病を患っているとのこと。

そういう関わらない方がいい人っているんだな、と本当に思いました。

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