よからぬ風習の土地に来た

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

20年ほど前、小学生だった頃、父の仕事の関係で海外から日本の田舎に引っ越した。

小学校が1学年1クラスしかないほどの人口の少ない町。
当時私は、日本語が全く喋れず(住んでいた国の公用語と英語で生活)、引っ越し先が方言や訛りの強い地域だったため、授業もほとんど理解できていなかった。

その学校では、毎日授業が終わった後に決まった詩?を暗唱することになっていて、詩自体は5分程で読める文章だけれど、古めかしい文章で、日本語での日常会話さえ満足にできなかった自分は中々覚えられなかった。

1学期の半ば頃、体調不良で1週間ほど学校を休んで久々に登校すると、今日は授業はなくクラス全員で外出するという。
クラスメイトのAちゃんに聞くと、英語でなんて言うかな、とちょっと迷って「うーん、ショーだよ。プリンセスの!」と言われたので、何かお芝居を見に行くのかと思っていた。

先生の引率で学校からクラス全員で移動し、ついた先は山の途中の小さな神社?だった。

大人の男性が3人とクラスの女の子のうち2人が巫女さんの袴まで白のバージョンのような衣装を着ていて、男性が色々と注意事項のようなことを言い(訛りでよくわからなかった)、ここで「ショーを観る側ではなくて演じる側なんだ」と気づいた。

大まかな流れは、神社のコ字型の廊下を巫女風の恰好の女の子達を先頭に二列になって2周回り、全員が回り終わったら正面に4列で整列して例の詩を全員で読み上げて終わり。

説明しにくいのだけれど、コの字型の廊下を歩き行き、止まりについたら先頭はUターンして反対側に進む感じなので、歩いている途中に先頭とすれ違う感じになる。

前の子に続き歩いていると、2周目であれ?っと思った。
1周目にすれ違ったとき、先頭は確かに女の子2人だったのだけれど、2周目には白っぽい着物の女の人が先頭、その後ろに水色と赤の着物をきた男の子が1人ずつ、その後ろに巫女風衣装の女の子たち、その他の子供たちの順に、となっていた。

そして、丁度私とすれ違うタイミングで列がピタッと止まり、水色の着物の男の子が急に私に向かって、「君みたいなきれいな子、初めて見た。ぼくのお嫁さんになってくれますか」といった。

ディズニーの王子様みたいなセリフだなと思ったのと同時に、このショーに自分の役があったのか?とびっくりして周りを見回したけど、誰も微動だにせずまっすぐ前を向いたままだった。

暫くして、「私が答えないと次のシーンに進めないんだ」と思い、「いいわ」と答えた。(ディズニー日本語吹き替え版のセリフを真似した)

すると男の子はにっこり笑って、ポニーテールに纏めた私の髪に紫色の髪飾りをさしてくれた。
挿し終わって男の子が再び前を向くと、また列は動き出した。

その後は説明された流れの通り、並びなおして例の詩を読上げてお昼前に解散した。(直前休んでいたのもあり、覚えてなかった自分はほぼ口パク)

家に帰ると母が髪飾りを見つけ、どうしたのか?と聞いてきたのでショーで貰ったと説明した。

母は髪飾りを見て、「古そうだから、くれたんじゃなくて学校の備品じゃない?明日返そうね」と言った。

ところが翌日高熱が出て、学校を休むことになった。

その翌日も熱は下がらず、3日目の欠席連絡を母が学校にしたとき、髪飾りを返した方がよいかと尋ねた。

朝の時点では担任はよくわかってない感じだったらしいが、お昼過ぎに電話が来てすぐに学校に持ってくるように言われたらしい。

母が髪飾りを学校に持っていくと、神社の方がいて、それは鍵をかけた部屋の箱の中で保管されていたもので、担任からの連絡を受けて確認したところ、箱の中から消えていたので娘さんが盗ったのだろうと責められたそうだ。

母は、娘はそんな子じゃないし、劇中で渡されたと言っている・そもそも施錠された部屋ならなぜ入れたのかと反論し、Aちゃんも、ずっと私の隣にいたと証言してくれたらしいが、私が勝手に忍び込んで持って行ったのではないか?と一方的に決めつけられた。

夜になっても熱は下がらず、食事どころか水以外受け付けなくなった。
そして熱にうなされ怖い夢を見た。

赤い着物の女の人が、手を掴んで柄のついた剣山のようなもので私の左手をグサグサと刺していく。
痛みは感じないのだけど、怒りの形相の女の人と刺された腕から流れ出る血が怖くて、叫び声をあげた。

逃げようとしたけれど捕まれて逃げられず、手首からひじの上のところにかけて刺されたところで目が覚めた。

翌朝部屋に来た母が、私の腕にできた大きな真っ赤なあざに悲鳴を上げ、すぐに県庁所在地の大きな病院に連れていかれた。

大きな病院で「赤あざが急にできることは幼児にはあるが、この年齢では珍しいのでサンプルをとらせてほしい」と言われたらしい。
傷が残ると聞いて母が断り、その日は帰った。

その日の夜も、次の夜も同じ夢を見た。
翌朝目が覚めると、あざがまた叩かれた部分まで広がっている、ということが続いた。

3日ほど経った夜、刺されてはいるのだけど痛みはないので恐怖を感じつつも少し冷静になり(慣れてきたのもある)、女の人に「どうしてこんなことをするの?私も私の家族も困っている。人を傷つけるなら、あなたは捕まって刑務所に入ることになる」というようなことを言った。

昔住んでいた国の言葉で、もちろん日本語ではなかったのだけど、通じたのか女の人はこちらを睨むと手を放してどこかに行った。

次の日の朝、母が探した別の病院で点滴をしてもらい、あざ用のクリームをもらった。

熱はまだ下がらず、食事も受け付けないので体力的にもかなり消耗していたが、自宅に戻った。

この日の夜も夢を見た。

「あぁ、またあのおばさんがくるのか、嫌だな」と思っていると、神社で髪飾りをくれた男の子が現れた。

何か喋っているのは分かるけど、水の中で喋っているような声で全然わからない。
「聞こえない」と言うと、悲しそうな顔をして筆を取り出し、何か空中に文字を書くとふわっと消えてしまった。
書いた文字がキラキラしていて、綺麗だったのを覚えている。

翌朝、目が覚めるとまだ身体はだるいが熱は大分下がり、食事をとれるほどには回復していた。

部屋で寝ていると、お粥をもってきた母が「熱は下がったけどあざが治るまで、しばらく学校はお休みしようか」と言った。

正直、授業はつまらなかったので、学校を休めるのを喜んだ。
結局、その後は1度も登校しないまま夏休みを迎え、夏休み明けには母の実家に引っ越し、東京の学校に通うことになった。

大人になってから理由を聞くと、当時の小学校は例の詩の朗読や奇妙な土着信仰に傾倒した教育内容が多く、加えて一連の騒動時の地域の人の対応が異常で気味が悪くなったらしい。

前に住んでいた国で、カルト宗教に嵌った父親が娘の同級生を生贄にするという事件があって、同じようなことが起こることを恐れた両親がすぐ引っ越しを決めたらしい。

それ以降は変わったところは特にない。
あざは貰ったクリームのおかげか、かなり小さくなりほとんど見えないレベルまで消えた。
2か月ほどかかったけれど。

結局、あの髪飾りが何だったのか、女の人と男の子たちが誰なのか、あの行事や授業は何だったのか、色々な疑問は分からないまま。

夢とはいえ憤怒の表情の女の人に剣山で刺され続けたり、奇妙な真っ赤なあざが全身に日に日に広がっていたりが怖かった出来事でした。

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