焼かれていく親

阪神大震災逸話集

地震後、急いで駆けつけると、母親は潰れた家の下敷きになっていた。
幸いにも、まだ彼女は生きていて、声のみで姿が見えないが、確かに助けを求めている。

助けようとしたが、一人や二人の力では倒壊した家屋の屋根を動かすことはできない。
重機(クレーン)が必要だが、そんなものはない。
見ず知らずの人々も応援してくれたが、いかんともしがたい。

母親を励ますのだが、いたずらに時が過ぎて、やがて街を舐め尽くしながら火の手が迫ってきた。

気が狂ったようになって素手で掘り返そうとしたが、やがて母親の声は、「ありがとう。わたしのことはもういいから逃げなさい、あんたまで死なせるわけにいかんから」と言った。

火の勢いに押されながらじりじりとその場を後退し、そして火が家を包むのを茫然と見守るほかなく、申し訳ないと合掌するしかなかった。
翌日鎮火して後、くすぶる焼け跡で骨を拾った。

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