突然届いた謝罪文

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

まだまだネットが一般的ではなかった頃。
自分の周りに同じ趣味を持つ人がなかなかいなかったため、ある雑誌の友達募集的なコーナーに実名と住所を載せた。

それをきっかけに出会った人たちとは楽しく過ごしたが、私は三年程でその趣味に飽き、関わりを持った人達ともいつしか疎遠になり、私の中で、趣味に関してはそこで終わっていた。

それから約20年が経って、手紙が届いた。
差出人は知らない人で手紙の一行目に大きく「謝罪文」のタイトル。

手紙の前半をざっくりまとめると、以下のとおり。
「20年前に友達募集の記事を見て私の家まで行った。住所から番号案内で電話番号を調べて電話も掛けた」

私の父によると確かに20年前、自転車に乗った男子高校生風の男が自宅を訪ねてきたことがあるらしい。
ただ、その人物がこの手紙の主かは不明。
電話については自営のせいか、昔からいたずら電話や変な電話が多いので判別付かず。

手紙には続けて趣味についての妄想と熱い意見が延々と書かれており、合間合間に「○子さん(=私)もそう思うでしょう」的な文句が挟まれていた。

そして締めの文章は、「僕は声優のAさんと結婚を前提として付き合うという夢を持つにいたりました。だからもうあなたとは会えない。もう電話もしません。僕はAさんと付き合うから、僕の住所はあなたに教えられない。僕のことは忘れてください」・・・という内容。

繰り返すが、私はこの差出人を知らない。
20年前の友達募集では女性としか関わっていない。

改めて封筒を裏返すと、差出人の住所は一度書いた後に黒マジックで塗りつぶされていた。

私はこの手紙で彼の名前を知っただけで、他は何もわからない。
会ったことなんかないと私は思っているが、実はそうではないのかもしれない。
20年間、ずっとではないにしろ、彼が私を忘れない程度には、こちらに関わってきていたのだろうか。

そう思った瞬間が衝撃。

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