彼はねずみと共に消えた

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

だいぶ前に聞いた話。

ある新人社員が一人で深夜残業をしていた。

次の日、仕事していた書類その他がそのまま放置された状態で彼の姿が無かった。
彼は、独身で両親もなく身内といえば兄弟のみだったが、それほど仲が良くなかったのか、兄弟は会社に御願いしますとのことだった。

会社は、仕事が終わらなくてノイローゼか何かで失踪したのでは?と思ったが、もしもの事を考えて警察に失踪願いをだした。

警察も状況を見て失踪ではないかと思ったが、家に帰った形跡も銀行からお金を引き出した形跡もなかった。

それから約一年後、警察から彼の社員証、定期等を会社に持ってきた。
それらは、かなりぼろぼろになっていたのだが、なんとか彼のものだと確認できた。

警察の話だと近くのビルの地下ピットがネズミの巣になっていて、そこでネズミの駆除で作業員が入った時にぼろぼろの背広をきた骸骨が数体見つかり、その一体の背広の中から見つかったものだとの事だった。

事件に巻き込まれ殺されてからそこに放置されたのか、失踪した後、何かの理由でそこに入った後死亡したのかは不明だとの事で、捜査は細々と続けられたけどその内有耶無耶になった。

ただ、うちの会社では一人での深夜残業は控えるように通達が出て、深夜残業する人たちには「ねずみに引かれるなよ」と言うのが合言葉として残っている。

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