今年の正月のつまらない話。
せっかくの正月休みだが一人暮らしだし、大した物は用意してなかった俺だが楽しみにしていた事が一つだけあった。
テレビで正月特番見ながらコタツに入ってミカンを食べる事だった。
本当に小さな小さな楽しみだが、正月だということもあり、いつもなら買わない高級な無農薬のミカンを用意していたんだ。
粗末な夕食を早々に済ませた後、小一時間程経ってからコタツでテレビを見ながらミカンを食べ始めた。
「美味~っ!やっぱ高級なミカンは違うわ!」
・・・なんて、下らない事を思いながら食べ進め、気がつくと十個程あったミカンもあっという間に残り一個だけになっていた。
ここで、ふと考える。
「このミカン、高級なだけあって美味いんだけど、外皮が薄くて皮をむく時に爪で内皮を傷付けちゃうのが難点だよな~」
最後の一個、俺はテレビを忘れるほど慎重にミカンの皮むきにチャレンジした。
だが、健闘虚しくまたしても爪で内皮を傷付けてしまった。
・・・と思った次の瞬間、傷付いた内皮から小さな白い物体が出てきた。
最初は目を疑ったが、内皮の上を白い物体が踊り出す・・・虫だ!
全長二ミリほどの虫、尺取り虫、華麗に波打つ姿を目にし、俺はそっと外皮を閉じてゴミ箱へ最後のミカンを捨てた。